< 「きく」と「みる」 >
 「お役所仕事」というのは、気が利かず、駄目なサービスの代名詞。しかし、最近のお役所仕事は結構侮れない。
 
 自分が住んでいる自治体では、体育館や図書館と言ったハコモノ以外にも、「市民講座」のようなものが結構豊富だ。まぁ、休みの日は寝ていたいので滅多に出ることはないのだが、先日は「上手な話の聞き方」。話題になっている阿川佐和子さんの「聞く力」を面白く読んだので、気まぐれで参加してみた。
 
 タイトルの「聞聴訊利効・見視観診看」は文字化けではない。前者は「きく」、後者は「みる」で、これらがどう違うかを理解するかが重要なのだというところから、講座はスタートした。
 
 「きく」では、「聞く」は耳に入ること、「聴く」は注意してきくこと、「訊く」はたずねること、「利く」は利き酒というように五感で感じること、そして「効く」は効果があることだと。
 
 一方、「みる」では、「見る」は目に入ってくること、「視る」は映画やテレビのように注意してみること、「観る」は観察という文字にあるように変化をみること、「診る」は表のみえる現象から内面をさぐっていくこと、そして「看る」は看護ということばからわかるように応援したり、きくばりをしたり、サポートすることであると。
 
 組織におけるコミュニケーションとしてじゅうようなのは、「訊く」「利く」「効く」と「観る」「診る」「看る」という段階に意識して移行できるかなんですと。なるほど。
  
< きちんと「きいてもらえる」こと >
 人というのは社会的な存在である、とかなんとかいう有名な言葉がありますが、確かに「無視される」「存在を認めて貰えない」ということが一番辛いことです。きちんと自分のことをみて、きいてくれるということは、それだけで非常にモチベーションがあがります。
 
 加えて、健康にも良いそうです。医学的にチェックをしてみると、良いコミュニケーションをして、相手が十二分に話ができました、スッキリしましたという時の体は血糖値が下がり、免疫力が上がり、海馬だか扁桃体だかに流れているホルモンも安定し、キレなくなるそうです。また神経繊維のシナプスもばんばか増えるそうです。
 
 だか、最近「キレる」子どもが多いということは、周りの人間がきちんと子どものことをみききしていないって事らしいです。深いわぁ-。
  
< 「きく」ための二つの技術 >
 で、これまでのことはどちらかというと概念論なんだけど、やっぱり良いコミュニケーションをとるには技術がいるんだそうです。具体的には二つ。
 
 まずひとつめは「7W2H」を理解すること。
 
 んー、「5W1H」というのは中学生で習いました。Why, What, When, Who, WhereとHowですよね。残りの2つのWと1つのHは?。Why, What, When, Who, Where + Whom, Whichの7W、How + How many (or How much)の2Hだそうです。
 
 で、重要なのはここから。これらの7W2Hは話を聞くときに、性格が違い、使い分けを考えながら使うものなのだそうです。
 
 What(なに?), Why(どうして?), How(どのように?)は、答えを「考えさせる」問いで、「話を発展させていく」のに使うワード。一方、Who(誰が?) ,Which(どっち?),Where(どこ?),When(いつ?),Whom(誰に?),How many(How much)(どのくらい?) は答えを「探しに行く」問いかけで、話をより具体的にしていく時に使うのだそうです。言われてみればなるほど。
 
 「考えさせる」問いかけをしても、答えが出ない時ってありますよね。その時は「探せば出てくる答え」が帰ってくる問いかけに言い換えるそうです。これに「イエス」か「ノー」しか選択肢のない「クローズ・クエスチョン」というのを上手に絡めて、相手により多く話をさせていく。これが一つ目のテクニック。
 
 ふたつめは「積極的にきいているよという姿勢と態度」を見せること。
 
 例えば、お互いの物理的な位置関係。真向かいに一対一で座ると、どうしても対決姿勢になっちゃう。労働組合の断交みたいな感じです。でも、トーク番組でよくありますが、テーブルの一辺と一辺、つまり90度で斜めを向きながら話すと、リラックスして話せちゃう。また、お互いに入り込んで来たくない物理的距離というのがあって、それを確かめながら、遠くなく、かといって相手の警戒領域にも入らないギリギリの位置を探りながら話すことが重要だそうです。
 
 他に、姿勢、表情、アイコンタクト、うなずきや相づち、合いの手(ex.ほうほう、それで…、とか、なるほどねぇ…とか)、相手の言葉で重要な部分を繰り返すリフレイン、自分で結論づけないで相手にきくこと….などなどだそうです。要は「あなたの話を聞いてますよ、興味ありますよ」ってことを見せるということですな。 
 
< 会話のアンチョコ >
 会社の上司部下とか、先生生徒とか、友達同士でも、必ず「アドバイス」しちゃうから、話が成立しなくなっちゃって、お互い消化不良になるそうです。
 
 よく雑誌の「悩み相談室」でもありますが、「答えは自分自身が持っている」んですよね。要は背中を押して欲しいと。もしくは、自分自身でもっているけど、それが潜在的に存在しているので、顕在化させてあげると。それが上手なコミュニケーションだそうです。自分がしゃべるんじゃなく、相手にしゃべらせる、相手が持っている結論を引き出すということですね。
 
 講師の先生がこんなフレーズを使うと良いですよ、というのでメモってきました。こんな感じです。
「今、取り組んでみたい目標は何ですか?」
「いつまでに、どんな形になればいいと思ってらっしゃいますか?」
「目標につくまでにどんな中間ステップがありますか?」
「どんなプロセスをたどれば目標に行けそうですか?」
「解決したい問題点は何ですか?」
「一年後に、成功したなあって思えるイメージって何ですか?」
 
「問題をつくっているあなたの原因はなんだと思いますか?」
「それについて、ちうもどくらい考えていますか?」
「あなたにとって、その問題はどの位、重要ですか?」
「それって、本当にそうだなぁって感じですか?もっと軽い感じですか?」
「他にはありますか?」
「精神的に、思い込んでいると感じることはありますか?」
「その問題の外的な要因ってなんでしょう?」
「現状だと何%の確立で達成できると思いますか?」
 
「問題を解決する方法は何だと思いますか?」
「それを解決するのに、既にあなたがお持ちでらっしゃる資源って何だと思いますか?」
「あなたをサポートしてくれるとしたら、誰がいますか?」
「何か他にできることってありますか?」
「あなたが私だったら、どうしたら良いとアドバイスしますか?」
「他に解決するのに必要なものは何でしょうか?」
 
「どれからやることが一番効果的でしょう?」
「いつから始められそうでしょうか?」
「実際に行動に移す確率は現在何%ですか?」
「何があったらもっと確率はあがりますか?」
「私があなたをサポートするとしたら、何ができますか?」
「目標に進んでいるかどうかは、何で測れると思いますか?」
 
 いずれも一個一個はたいした話じゃないですよね。ていうか、むしろ、こんなんで有効なのかよと思いません?。ええ、実は私もそう思いました(爆)。
 
 でね、妻にやって貰ったんです、試しに、講演会から帰ってきてから。
 
 妻には何についての悩み相談かを一切言わずに、自分の頭だけ仕事の悩みを浮かべて、妻に上のフレーズを適当に選んで言って貰ったんです。そうしたらですねぇ、かなり悩んでいた問題をどうしたら良いか解決の方向性が頭の中で組み立てられたんですよ。スッキリしましたねぇ。
 
 是非、上の「 」部分をコピペして、自分が被験者になってやってみてください。完全解決とまではいかなくても、相当程度頭の整理ができますよ。
 
 最近の自治体のサービス恐るべし、って感じでした。