▼ コロナ禍が明確に認識されてほぼ2年経った。そしてDXという言葉も誰もが知るようになった。しかし、コロナは現実のウイルスだが、DXは言葉先行のブームに過ぎないじゃないか、ずっとそう思ってきたし、そう思ってきた。

▼ しかし、DXはコロナ禍に気を取られているうちにしっかりと私達の生活に巣食い、既存のビジネス領域を侵している。年末のいま、ふと振り返ってそれに気づいた。迂闊な話だ。そしてそれは自分が長年見てきた流通や消費の世界をいつの間にか書き換えている。意識しているものを挙げてみよう。まだまだ、あるはずだけど。

▼ まず「映画館」だ。一時期、低迷の極みを行っていた映画館が、座席もスクリーンも音響もサービスも大きく改善して、30年は経つ。シネマコンプレックス、シネコン様々のおかげだ。ららぽーと船橋で三井不動産でさえ大手映画会社を説得するのに苦労して作ったシネコンが、もはや映画館のスタンダードになっていることは意識もされない。

▼ それがいつの間にか、Amazonプライムに置き換わり、U-NEXT、そしてNetflixとなった。勿論ケーブルテレビはあったし、CS110度放送もあった。光回線がそれらを促進したことは間違いない。しかし、そのインフラを使ったNetflixの現在の形は映画館に行くと言う行為を大きく代替している。

▼ ハイビジョン画質で一ヶ月1700ナニガシ円で見放題、しかもオリジナル作品ごっそりということは、見る家族数や見る本数、見られるデバイス、そして見られる時間を掛け算するととんでもなく低コストだ。一本、どうしても見たいコンテンツがあれば、加入して一ヶ月で解約(正確には停止)すれば良い。また見たいものが出てきたら再開するだけだ。自分の好みもアカウントもすべて残っているので簡単だ。使おうが使わまいが配送費を含めているという理由で毎年忘れた頃に、かすめ取られるように引き落としされるAmazonプライムとの差は歴然としている。「意識して」お金を払っているという点で。

▼ AmazonプライムとU-NEXTなどの気に食わない点は、無料コンテンツと有料コンテンツがビミョーに混ざっていることだ。些細なことだが不愉快極まりない。Kindleもそうなのだが、最初の一冊だけ無料で読めて、二冊目からは払えというあの手法はもはや古いのではないか。価値があるコンテンツに銭は払う、そういう意識はもう消費者にできている。カネを払う必要がないものはYouTubeで探せばいいだけだ。尤も、違法アップロードも沢山あるし、そういうのはいつの間にか消されているし、そもそも画質が耐えられないが。

▼ コンテンツの価値。まさしくそこの原点にNetflixが戻っていることが恐ろしいところだ。回線やデバイスや画像圧縮技術や諸々の技術はそれをサポートし、運ぶビークルに過ぎない。実際、僕はもう三度もNetflixに加入ー停止、再開ー停止、再開ー停止を繰り返している。一回目は「全裸監督」第一シーズン、二回目は「全裸監督」第二シーズンと「転校生ナノ」、そして三回目は「浅草キッド」と「イカゲーム」だ。

▼ 実はこのコラムは「イカゲーム」を妻と冷やかしで見始めて、止まらなくなり、もう寝なければと強制的に明日以降見ることにして自室に帰って書いている。映画館でこれができるか?。もちろん家庭用ビデオの時代から録画したり、レンタルすればできたろう。しかし、これほど気楽にはできまい。おまけに妻は寝たかもしれないが、僕はいま先ほどの続きから見ようかと思いながら、これを書いている。こんな見方ができるか。

▼ しかもデバイスは選び放題だ。リビングの大型テレビ、食卓の小型テレビ、家族がそれぞれ持っているパソコン、スマホ、なんでもござれだ。「映画館のあの雰囲気が大事なんだよ」、うん、確かにそうだろう。でも、変異株が次から次に出てきている今、映画館にわざわざ足を運んで、しかも一回こっきりしか見せてくれないコンテンツを感染リスクを冒してまで行くつもりは毛頭無い。

▼ それよりも60インチくらいの型遅れのテレビかプロジェクターとスクリーンを買って、AmazonFireTVを繋いでNetflix+Amazonプライム+他のサービスを見る方が遙かに経済的だし、満足度が高い。サラウンド?、そんなものはもはや映画館の売りでもなんでもない。そこらへんのサウンドバーかドルビーアトモス対応ヘッドフォンでもすれば5.1ch時代のあの面倒な配線も不要でさらにクオリティの高い音が聞ける。もちろん、テレビ番組も見ることができる。

▼ そうすると、逆に言えば、テレビ放送というのが如何にオワコンかを認識せざるを得ない。テレビ受像機でありとあらゆるコンテンツは見ることができるのに、テレビ放送はテレビでしか見ることができないのだ。なんでパソコンで見ることができないのか?。阿呆じゃ無いのか。おっと口が過ぎた。映画館とNetflixの話だった。

▼ Facebookでたまに書き込みするが、最近最もリアクションが大きかったのが「浅草キッド」を見たという短い書き込みだ。ウソだろと思うほどの友人からコメントやリアクションを貰った。ビートたけしというのが僕らの世代のヒーローの一人であったにせよ、これだけの反応は明らかに脚本と俳優、そして内容、つまりはコンテンツがよかったからだろう。NetflixをDXとかプラットフォームから語る前に、そもそも提供されるサービスのクオリティが第一ということだ。

▼ 怖いのは、これを支える仕組みは技術もインフラもコンテンツもできていて、コロナ禍という引き爪ひとつで号砲が鳴り、雪崩がおきたということだ。

Netflix映画『浅草キッド』とコラボレーション決定! 高田文夫、ナイツのニッポン放送の2番組 – ニッポン放送 NEWS ONLINE

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