▼ コロナ禍+DXが変えた消費。今日はその第二弾を書く。ズバリ「有店舗販売」だ。年齢やモノへの欲望のせいもあるだろうが、最近、有店舗販売に対しておおよそ魅力を感じない自分に気づき愕然としている。あれほど、「酒はやっぱり店で呑むのがいいよね」と言っている自分だが、買い物に関してはさほどの渇望感がない。

▼ 思い返せば無店舗販売、もっと言えばECやネット販売自体はコロナ禍の遙か前からメジャーな買い物方法になっていた。本を書店で買うことは少なくなったし、服はスーツ関連と下着以外は同じものを20年着ている自分にとって(ランズエンド製品の「保ち」の良さは異常だ)、ユニクロでさえ行かない。まぁ、これは特殊だが。食料品は妻が生協さんで週一回購買+適当に近くのスーパーに買いに行っているので自分で買いに行くのはアイスクリームだけだ。

▼ 百貨店は、先日久々に日本橋高島屋、横浜高島屋、新宿伊勢丹に行く機会があり、素敵だと思うが特段ここで欲しいほどの特殊なものは無い。モールは自動車を手放して久しいので、レンタカーやカーシェアをしてまで行こうとも思わない。そもそもどこにいっても似たような店ばかりだ。百均は確かに安いし、発見する喜びがあるが、買っても使わない商品が意外と多く、捨てる時に胸が痛む。しかも安物買いの銭失いになることも少なくない。

▼ というわけで、店に行って楽しいなと思うのは趣味のものくらいだ。そうギターとか。でも、ギターを何本買う財力もなければ、そもそも弾ける本数は決まっている。同じ楽器関連でもギター弦などの用品はネットで買う方が明快だし、時には安い。

▼ お世話になった人への贈り物はYahoo!ショッピングやPayPayモールで済ませる(Amazonだと梱包がイマイチなので)。その他のものは、特に機能や性能や比較をしたい商品は殆どネットで買う。お気に入りはヨドバシドットコム、前にも書いたように変な品質のものを売るようになったけどAmazon。それで済んでしまう。

▼ 逆にネットで買っているものを店で買う手間を考えると、これが結構ダルい。例えば無くてはならないインクジェットプリンターでの印刷のための印刷用紙(コピー用紙)とインク。ジレットモデルで純正インクはバカみたいに高いので一切使わないから、必然的にサードパーティーのインクを試して良いのを何度も買う。これが家電量販店ではやたら手間がかかる。そもそも試すだけのサードパーティのインクを扱っていない。家電量販店の報奨金制度のせいだろう、やたら大手のものしか置いていない。コピー紙は時々安いけど、持って帰る面倒くささを考えたら、ネットが遙かにマシだ。

▼ それ以外の事務用品、仕事に使う品物やPC周りの商品も同じ。ハードディスクやwi-fiルーター、スマホケーブル、USBメモリ(最近あまり使わないけど)、PC本体、タブレット、スマホ。すべてネットで買った方が楽。まぁ、タブレット、スマホはキャリア独自設定をしなければならない時はキャリアショップの方が良いが、いまだに僕はiPhone6 Plusを使っているのでそうそう買い換えるわけじゃない。書類整理関係、封筒、文房具、総てネット。お気に入りのボールペンの芯を探す時は、下手な文房具屋にいくよりさっくり見つかる。

▼ となると、いま机の前に座ってぐるっと見回して、有店舗じゃないとやっぱりなぁ~と思うのは、メガネ、処方薬(これは医療用なので店舗ではないかな)、、、、、うん、それだけだ。引き出しを全部あけてみたけど、見事に有店舗じゃ無ければないものは無い。

▼ 尤もアドバイスを貰えるならば、買いたいなというものはある。ノイズキャンセリングイヤフォンが欲しいが、余りの多くの種類があって迷うし、メーカーや型番によって音は大きく違うので、どれが一番よいかは聞いてみたい。他には名刺整理ソフト・サービスで良いのがないかは知りたい。使っていた整理ソフトがGoogleやiCloudと連携しなくなっちゃったので(仕様変更らしい)。仕方ないので、スキャンできる名刺整理ソフトを買ったが、過去に撮影した名刺写真のjpegを読み込むモノがどれ一つない。このあたりは欲しいけど、家電量販店に行く気にはなれない。なぜならば、それに値するアドバイス、商品知識がある家電量販店が無いからだ。

▼ そんな中でちょっと驚いたのが、(1)カインズによる東急ハンズ買収と、(2)Jフロントリテイリングが賃貸住宅事業に進出するというニュース。

▼ (1)は買収されたということより、その背景。識者である辛坊治郎さんがラジオで仰っていたのだけど、彼の趣味に使う特殊なドライバーだかの道具は以前はどこにも売っておらず、必死で探したら東急ハンズにだけあって、「さすが東急ハンズ」と涙したと。しかし、最近、ネットで検索したら山のようにネット販売で売っているそうだ。うん、東急ハンズは確かにセレクトショップみたいなもので、この店にいく価値があったが、今は、、、、、無い。

▼ (2)はここ20年くらいの小売業の収益源から考えるとよくわかる。小売業の粗利益率は最も高いアパレルで50~60%、最も低い生鮮食品で15%位。営業利益になるとアパレルで10~20%台が上限、食品だと1~3%が普通で5%あげていたら[驚異の利益率」だ。そのため、大型スーパーや百貨店はテナントリーシング、つまりテナントへの場所貸しという不動産業に軸足を移してきた。その成功例がイオンモールであり、玉川高島屋であり(もっともここは遙か昔からやっているけど)、Jフロントリテイリングであり、丸井グループだ。丸井グループに至っては自分で売ることを放棄した。金融事業収入があるからとはいえ、凄い話だ。

▼ だが、コロナ禍は大型店舗の開店を阻み、再開した後も以前のような賑わいは無い。ということはテナントも儲からないので賃料払えない、撤退する。その証拠に先日、池袋のP’パルコにいったら五階に百均のセリアが入店していたのには度肝をぬかれた。この会社、渋谷の丸井の店に出店したり、時々、どうやって見つけてくるんだろうという物件に入るのだけど、今回もそうだった。ということはテナントリーシングで食っていくのももはやしんどいということだろう。Jフロントが賃貸住宅に手を出すのも分かる。

▼ ただ賃貸住宅に手を出すならば、最も旨味があるのは保証人の代わりの家賃保証保険や家賃収納代行などの金融事業だ。高齢化が進む一方で、運用不動産が増えた今後は、高齢者が孤独死しても大丈夫なようにハウスクリーニングやその他の処理も込み込みにしてくれる高齢者賃貸保険を出すところだろう。前二者は丸井グループが既にEPOSカードでやっているから、多分、高齢者向け賃貸人保険も丸井グループが何か手を打つのではないかと思っている。しょせん保険なんてものは先着一名様の商売。後からやったところはさほど儲からないだろう。

▼ てなわけで、小売業を長年担当しているくせに有店舗販売に対して希望をあまり見いだせない自分がいる。いや、もっとはっきり言えば、ネット販売のファンクショナルな利便性を超える有店舗小売業が極めて限定されているということだろう。実物を見る安心感は昭和世代の自分にはあるが、果たして子どもやもっと若者のZ世代にそれがあるのかといえば疑問。

▼ その意味では流通専門誌に書いてあるカインズという一流ホームセンターが都心に店をもったということの意味が大きいのかもしれない。ダークホースだったワークマンがあれほど評価されるようになったのも、プロ向けという路線をきっちり守ったからだ。事実、大都市の都心でホームセンター商材(特にDIY用品、就中素材系)を買うのには苦労する。そんな風にどんどんマーケットは有店舗に逆風なのかもしれないなあ。

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