▼ 経営学やITや色々な分野で新しい言葉がしょっちゅう出てくる。みんなが意味を分かっているようで、実はその実体がよく分からない言葉、それをBuzzword・バズワードと呼ぶ。私的にhあ「流行り言葉」と最近は呼ぶことが多い。

▼ ここ数ヶ月、特によく聞く言葉が「心理的安全性」だ。こいつが企業経営にとってはとても重要なんだ「そうだ」。カッコ書きで書いたのは、そんなこと今更言われなくても分かっているという揶揄的な意味合いがあることは言うまでもない。

▼ 心理的安全性というのは、簡単に言えば、「お互いがハラを見せ合い、信頼でき、そのうえで自由闊達にものが言えるような雰囲気のこと」だ。ね、そんなのあたりまえだと思うでしょ?。ただ、それを構築するのは地道な努力がいる。若手社員は上司に本音のことなど容易には言わない。腹の底で煮えくり返るような思いがあっても、だ。ま、それが日本的処世術である。良く言えば本音と建て前という日本文化に行き着くので、必ずしも悪いことばかりじゃない。

▼ ただ、「これじゃマズイよな」とみんな思っているのに誰も言わず、そのうち会社が傾きました、自分もクビを切られましたでは洒落にならない。そのために昔から「飲みニケーション」など、どうやって部下や若手や同僚が本音をスッと言い出せるかどうかに日本企業は腐心してきたし、そのためのコストが税法上は経費として落ちないことを覚悟しても、社内飲み会は頻繁に行われていた。

▼ これはもはや化石だが、社内旅行もそうだった。ま、今の時代、コロナの問題を除けば別に旅行は特別なイベントではなくなったからというのもあるが、日頃上下関係やなんとなく合う合わないの関係がある会社の仲間と旅に出て、観光をし、温泉に入り、酒を酌み交わし、おしゃべりをすることで距離はグッと近くなったりしたものだ。まさしく「心理的安全性」を構築するために涙ぐましいコストをかけていたのである。

▼ 教育や人材育成もそうだった。疲れて帰りたいであろう上司も若手を育てるために夜遅くまで付き合って勉強会をしたり、資格取得のための指導をしたり、色々なことをした。だから紋切り型の研修に頼らずとも人材育成が進んでいった(もちろん年功序列や終身雇用制が背景にあったことも大きい)。

▼ しかし、今はどうだ。上司が若手に教えてあげたくて残せば働き方改革に反すると人事部からは怒られ、若手も「それは業務ですか」と聞くようになった。飲みニケーションも同じで、別に酒は飲まなくてもいいから、旨いものでも食いながら色々と話そうよということ自体も「それは業務ですか。会社の業務ならば残業代ください」という時代になった。

▼ しかし、一方で本当に若手の責任だけなのか。この記事によれば、2022年から新卒が減り、労働力人口がいよいよ減少するという(「2022年問題に「びっくり転職」 人事担当悩ます困り事」https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM172UM0X10C22A1000000/?n_cid=LMNST002_money )。でも、そりゃそうだろう。悪い意味で昭和の価値観を持ったオッサンとオバサンが自分の地位を守るために汲々とし、仕事はさんざん振ってくるのに、育成をしようともせず、下の手柄は自分のものというまるでドラマのような会社世界が今の常態となった。コロナでみんなが苛立っていることを差し引いてもオカシイとしか思えない。

▼ 自分を振り返れば、よく怒られたし、厳しいことも言われた。しかしながら、それは結果的に振り返れば自分を育ててくれたし、厳しいことを言う嫌な上司は、今はとても重要な人生の先輩だ。そしてそれらは普通のコトであったはずなんだが、「心理的安全性」などという大げさなタイトルがつけられて、本になって書店で売られている。そんなことは誰もが理解していたことなのに。

▼ 敬愛する吉田拓郎氏は30代半ば頃から既に「若い人」という歌を作り、それについての制作秘話を聞かれると「若いと言うことはそれだけで十二分に価値があるんですよ。若いっていいんですよ」と語っていた(それを語っているNHK-FMの「ニューサウンズスペシャル」という高橋元子さんがやっている番組のカセットテープが今でも僕の手元に残っている)。そしてあれから、40年近く経ち、拓郎氏は70代中盤となったが、今でもラジオで「若いというのは凄い事で、その才能には僕はいつも触発されますし、感動しますね」と語る。ま、残念ながらそれを聞いているオジサン、オバサンは理解していない人も多いのだけど。

▼ 今も昔もオジサンとオバサンは若い人にレッテル張りをする。いまならさしずめZ世代か?。ちなみに僕の時代は「宇宙人」であり「新人類」だった。要するにオジサン、オバサンなんか信じても無意味なんである。”Don’t trust over 30″、30歳以上は信じるな、が1960-70年代の若者の合い言葉だった。本能的にオジサンオバサンには何もわからねえと知っていたからだろう。だから、30歳になった吉田拓郎はおずぞうと「Rolling 30」(30を超えていけ)というアルバムを作った。

▼ 話があっちこっちにいったけど、要するに若いと言うことは素晴らしいのである。それをわかったようなわかんないような言葉で表現して、金儲けをして、物事がわかったような顔をしているオジサン、オバサンはそろそろ世間から退場すべきなのである。もちろん自分も含めて。そんなことをふと思った。

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