今回は久しぶりの投稿となるが、近年注目をされているリユースビジネスとSDGsとの関連性、並びにその意義についてフォーカスをしてみたい。

リユースビジネスは、限りある資源を有効に活用し、循環型社会の実現を推進する上で、重要な役割を担っているものと考えられている。

日本には古来より、ものを大切の扱う文化があり、「もったいない」の精神は、世界的にも注目されたことは、記憶にも新しいことと思う。

 

戦後、各産業において技術革新が急速に進み、経済成長を背景として、大量生産、大量消費の時代を迎えることとなった。大量生産によりコモディティ市場においては、誰もが比較的安価に商品を入手可能となり、消費者においては既存品を修理・手直しするよりも、新品を購入したほうが経済的であるといった「使い捨て」の意識を高めることに繋がり、結果的には、時代の流れの中で需要・供給サイドともに、こうした風潮を後押しすることとなった。

 一方でバブル崩壊後、低成長時代を迎えるとともに、これまで、あたかも無限であるかのような幻想を抱いていた石油をはじめとする天然資源が、限りある資源であることが広く認識され、また前述の大量生産、大量消費によるCO2、廃棄物等の環境汚染等、新たな課題に直面することとなった。特に環境問題については、地球温暖化に伴う深刻な自然災害の多発化やマイクロプラスティックによる海洋汚染、生態系破壊等、地球規模でのリスクとして、全世界で取り組むべき課題となっている。

 リユースビジネスとは、言わば物々交換のインフラを構築し、広くユーザーに提供することによって循環型消費サイクルの確立に携わるビジネスであり、社会的な意義も大きいと考えられる。

基本的なビジネスモデルとしては、顧客(供給サイド)から商品を調達し、事業者を経由、もしくはプラットフォームを介して、ダイレクトに顧客(需要サイド)に販売するといった「C to B to C」型のモデルであり、一般的な小売事業モデルがサプライヤー(マニュファクチャー)を供給起点とする点と大きく異なる。

リユースビジネスにおいては、その名のとおり需要サイドである顧客が一旦入手した商品を、供給サイドとして再販することとなり、商品自体の廃棄ロス削減やライフサイクル長期化等により、環境負荷の低減に繋がる。また、近年においてはオンライン環境も整い、一般消費者も手軽にECモール等への商品供給(オンライン出品)も可能となり、持続可能な社会への移行とも相まって、裾野としても大きく広がりつつある。

 リユース市場においては、貴金属、ジュエリー、ブランド商品をはじめ、自動車から家電、家具、アパレル等、フィジカル(店舗)、オンライン(EC)両面での市場拡大が進み、そして近年においては「メルカリ」に代表されるようなフリマサービスにより、欲しいものがスマホ一つで何でも見つけられるといった形で、顧客の出品、購入に関わる利便性が大きく高まったことで、今後も市場成長が期待されている。

ここで少し視点を変えて、リユース、リサイクルの観点から貴金属、特に「金」について、SDGsとの関連性を考えてみたい。

古来より「金」は経年劣化しないといった金属特性や「金」自体の希少性から「不変の価値」、「富の象徴」として、「金」そのものや金鉱山の所有、採掘権等をめぐり、歴史上、様々な争奪や紛争が個人間から国家間に至るまで、しばしば引き起こされており、現代においても、「金」をとりまく環境は依然として大きく変わっていない。

 「金」の採掘にあっては紛争鉱物資源問題(Conflict mineral compliance)にみられるような児童労働、強制労働等による人権侵害や環境汚染、自然破壊に加え、「金」そのものが、テロといった非人道的な武力闘争の資金源や非合法資金の合法的な資金への洗浄(Money Laundering)に悪用されるといった形で社会的にも大きな問題となっている。

 こうした背景の中、近年では「都市鉱山」といわれる貴金属リサイクルにも注目が集まっている。 金鉱山では金鉱石1tあたり数gしか採取できないが、「都市鉱山」のリサイクル原料(携帯電話の場合)は1tあたり200~300gの金が回収できると言われている。

前述の人権侵害や環境汚染といった社会的リスクを齎すことなく、むしろ効率的に「金」を採取できるといった点での有為性は高いと思われる。

またCO2排出についても、金鉱山での採掘から製錬、輸送に至るまで多くのエネルギー使用されることで、それに伴い多くのCO2も排出される。一方で、リサイクルの場合は製錬によるエネルギー使用が主たるものであり、リサイクル原料に含まれている金の含有率自体が、金鉱石と比較して高いため、金重量あたりのCO2発生量もはるかに少ないと考えられる。

類似ケースではあるが、リユース商品の例でみた場合、3gの金の指輪を製造するためには、一説によると採掘から精錬、輸送まで約18tのCO2が排出されるが、再生加工の場合には約1/6程度の排出に抑えられると言われている。

再生加工なしで再販されるリユース商品はもちろん、こうした形で再生加工された商品については、SDGsで提唱される自然環境負荷や社会的課題の解消の一助を担うものであるとも言えるのではないだろうか。言い換えれば、限られた資源を有効的に再利用するといった循環型社会の実現に向けては、リユースビジネスの担う役割、並びに期待は非常に大きいものと考える。

                                      (井本 幸一)

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