▼ ユニクロを展開するファーストリテイリングのIR活動は素晴らしい。決算説明会の資料だけではなく、動画まで見ることができる。さらに、決算説明会から数日経つと、スピーチした内容も一緒にした資料を掲載してくれるので、動画で何を言っているか聞こえない聴覚障害者にも親切だ。非の打ち所がない。

▼ 消費財としてのユニクロも、もはやリーズナブルな値段で、クオリティもよく、バラエティに富んでいる素晴らしい商品だというのが社会の一般認識だ。創業者であり経営者である柳井氏も有能な経営者で色々なメディアで語る氏のコメントや意見には惹かれるものが多い。

▼ だが、なのだ。本当にユニクロの商品は良い商品なんだろうか。実は僕はユニクロの商品をここ10年近く買っていない。いや、お店は僕の近くにもたくさんある。店員は親切だし、バラエティも豊かだ。でも、豊かじゃないものがある。それはサイズ、そしてユニクロの哲学であったユニセックス、どんな年齢の人にも役立つ商品というコンセプトだ。

▼ 一例を出そう。昨冬、長く愛用していた通勤用のコートがついに駄目になった。体が大きく、通勤時にはスーツを切る私にとって3Lのサイズがないとパツンパッツンになるのでコートの意味をなさない。さっそく、ユニクロの店に足を運んだ。素晴らしく機能的で適切な価格のコートが数種類ある。ボロボロのスーツを我慢してきていたので、ちょっと心ときめいた。3Lサイズもしっかりある。試着した。ん?

▼ 小さいのだ。腕を通すのに一苦労する。サイズを間違えてLLを棚からとったか?。いや、3Lだ。適応サイズは….僕ならば十分着れるはず。でも、腕が通りにくい。ついでに、スーツを来てコートの前を閉じようとするとチャックがしまらない。え?。ボロボロになるまで着たランズエンドのコートはそんなことはなかったぞ。アメリカンサイズとはいえ、このユニクロの寸法とほぼ一緒だったし。二種類、三種類と試してもだめだ。どれ一つ合わない。

▼ コート無しで通勤できるほど若くはないのでどこで買おうか焦る。さすがに百貨店でブランドものが買えるほどリッチじゃない。かといって、大きい人向けの専門店「サカゼン」に行くのは、ちょっと癪だ。しかたなく、またもやランズエンドで買うことにした。シーズンも進んできているので気に入ったデザインの3Lは売り切れだ。仕方なく、面白みのないやつを買う。届いて驚いた。ユニクロでは入らなかったコートと同じ寸法で3Lなのに、ゆったりと着ることができる。これは一体何なんだ?

▼ そういえば、と数年前のことを思い出した。それは夏の始まりだった。ポロシャツの新しいのが欲しくてユニクロに言ったのだ。ユニクロの染色と縫製クオリティは世界イチと言って良いほど素晴らしい。色落ちして子供の背中が真緑に染まったGAPなんかはどうしちゃったのという感じだが、ユニクロは素晴らしいのだ。で、試着すると….頭が入りにくい。襟ぐりが狭いのだ。半袖ポロシャルだから困ることはないけど、腕周りもやはりせまい。何よりこまるのはピッチピッチにこの太鼓腹が見えてしまう。3Lなのに、だ。

▼ もってまわった言い方はやめよう。ユニクロの商品は本当に良いのだろうか?。サイズが信用できず、着れない服は服ではない。多分腕が通りにくいとか襟口が小さいとかピッチピチなのは、今風の若い人向けにデザインを変えているからなんだろう。だとすると、ユニクロの理念である服を通して世界を変える、誰でも着れる良い服を作るというのはお題目じゃないか?。そんなことを訴えたくて(クレーマーじゃないです)ユニクロのお客様メール窓口を探したが、これまた見つかりにくい。というか見つからなかった。だから、ここに書いているんだけど。

▼ 一方で、絶対の信頼を持ってビジネス用に購買している服がイオンのトップバリュだ。サイズ揃えなどは以前に書いたことがあるので省くが、なにより素晴らしいのは「定番を切らさない」ことだ。日本の消費財はすぐにモデルチェンジする。余計なお世話だ。俺は昨年履いて心地よかったビジネスソック3足960円がほしいのだ。でも、普通の服屋には昨年の定番がない。困る。だがイオンにはある、素晴らしい。

▼ 柳井氏が最近インタビューに答えた「日本の将来は暗い、このままでは三流国になる」という記事はとてもおもしろかった。しかし、オカネを出し手ユニクロの商品が着たい私にとっては、日本の将来を語る前に自社の商品のサイズをきちんと見直すことを勧めたい。それを考えると既に過去の人になりつつあるけど、サイズの問題をなくしてしまおうと考えたzozoの前澤前社長のゾゾスーツは、メディアではボロクソに叩かれたけど素晴らしい構想だったんじゃないか。

▼ きちんとした定番商品をきちんとしたスペックできちんと長年売り続ける、そんな小売業が私には魅力的なんだがなあ。