私はあまりフランス文学などは守備範囲では無くしかも現在文学となると尚更なのだが、この本は私の通う放送大学の授業で取り上げられたもので、今の日本にも通じるストーリーと思い読んでみることにした。

ウエルベックの『服従』の舞台はイスラム政権が成立する近未来のフランス。

主人公のフランソワは大学教授であるが性的な享楽と虚無の間で「ボヤッと」生きている。

フランスからは自由(特に女性の自由)が制限されていくのだが、革命の血で自由を勝ち取ったはずのフランスの人々はこの「緩慢な」圧政に抗するでもなく静かに新しい支配者に服従していく。

そんな中で主人公のフランソワは唯々諾々と従うでもなく、パリから逃げ出したりするのだが、特に身の危険が無いとなると戻ってきて寂しくなってセックスを求めたり、スポンサーが変わったソルボンヌイスラム大学から招聘されると

喜んで応じ最後にはイスラムに改宗してしまう。

何度も読むのを止めたくなった。

ともかく内容が薄っぺらいのである。フランスが服従して行くストーリーもさしたる盛り上がりも無く淡々と進み、主人公に至って内的葛藤というのか感情が希薄で全く共感出来ない。

多分この薄っぺらさは現在のフランスの置かれた社会的、精神的空洞化を描きたくて、主人公をさらに薄っぺらく描くことによってストーリーに「人間味」を加えたいのだろうな、ひょっとして筆者はこんな感想を抱く読者に「じゃあお前はどうなんだい?」と嘲笑を浴びせているような気もして、意地になって読了しました。

読後感は最悪ですね(笑)。

しかし日本はどうかと読後思いました。

日本においても社会的、精神的な空洞化は進んでいると思う。

しかしフランスと日本が決定的に違うのはフランスでは少なくとも長いキリスト教の精神的支配と勝ち取った自由、民主主義の歴史があってそこからの「空洞化」を実感出来るのに対し日本の場合はそもそもあまり何かで精神が満たされた歴史が無く、空洞化は常態であったのではないかという点である。

先日、日本では高市政権が誕生し何と支持率が70%を超えるそうです。

70%という支持率は鳩山政権に次ぐ2番目のものだそうです。(正直鳩山政権の次と聞いて不安しか無いのですが)

これって満たされてる?

それともただの「空っぽ」に色のついた光があっただけですかね。

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