《 思いっきり風邪を引きました 》
 ここ三週間ほど、連続的に出張に出ていたのですが、ついうっかりしていて風邪を引いてしまいました。幸いインフルエンザワクチン接種を早期にしたいたせいもあり、インフルエンザではなくてただの風邪なのですが、これがなかなかにキツイ。

 熱とか悪寒とかお腹の具合が悪くなるとかそういうことはないのですが、とにかく「咳」が出ます。しかも、「コンコン」などという優しいものではなく、「ウー、ゲホゲホゲホゲホゲホ、ゲッホン、ウァー」というような強烈なのが出ます。で、面白いもので(全然面白くないですが)、このしつこい咳は夜に床につくと出るのですね。

 実は今の私の体型からは想像も付かないでしょうが、小学生低学年の頃までの佐々木は虚弱児童で、しょっちゅう風邪・気管支炎にかかっていました。で、それがこじれて小児喘息になりかけたことが一時期あります。今回の咳はあの時の発作に似ていたので、「もしかすると喘息再発?」と少々蒼くなりました。喘息発作は本当に辛くて、夜、眠るときになると発作が始まります。それが夜明け前まで続きますし、咳をしっぱなしだと息が吸えないので窒息死するのではと思う恐怖を味わいます。ただ、一本太い注射をして貰うと治るので、しょっちゅう両親には真夜中に救急病院に連れて行ってもらったものです。いまさら親の恩を感じます。

 ただ、今回の風邪はひきはじめから二週間を経過してなんとか直りまして、今は大丈夫であります。ご心配なく。

《 体調悪化=能力低下という事実 》
 で、この風邪を引いている間ですが、本当に仕事に手が着かず困りました。咳自体は夜中に出るので、職場とか事業会社訪問の際に困るわけではないのですが、なんとはなしに「思考がまとまらない」のですね。微熱もない、内臓疾患的な状況もない、でも、頭に繋がっている回路だけが「ふん詰まり」を起こしているような感じです。もしくは頭の中に薄ーいハトロン紙が一枚くらいはいってしまったようなというべきか。意欲も湧かないこと、この上ないです。

 そのせいか、ケアレスミスを1-2個やってしまいました。結果的には全てすぐに解決したので問題はないのですが、「調子悪いなぁ」という時期とピッタリ重なったので、「体調管理の重要さ」ということを改めて考え込んでしまいました。

 実際、病気だけではなく、酒も相当に弱くなり、飲み過ぎた翌日は確実に100%調子が悪くなるようになりました。そもそも飲める量が10年前に比べて極端に減っていますし、飲むものも前のようにウイスキーストレートとか焼酎ロックなんていうのは全くだめになり、「生レモンサワー」とか、流行の「ハイボール」などという「日和ったモノ」を飲むようになってしまいました(ちなみに「ハイボール」はモルトではなくグレンウイスキーの割合が多い廉価なものである方が、翌日には残りません。甲種焼酎のサワーみたいなものだからでしょうか)。

 だから、最近は飲む前に必ず水を飲んでビール一気のみをしないようにしたり、昼飯を食べ損なった時は事前にアメを舐めて空腹感を減らしてから飲むようにしています。最近は、「うー、いかん。これは口当たりが良いけど、このままあとX杯飲んだら確実に明日はしんどい」と予想が付くようになってきました。

《 体調悪化が経営判断のミスに繋がる経営トップ 》
 体調が悪いときに「頭が回転しない」とか「やる気が出ない」状態になるといつも思い出すのが、司馬遼太郎氏の小説、「功名が辻」です。

 数年前に大河ドラマでもやっていましたし、まさに今の大河ドラマの見せ場である大政奉還を提案する山内容堂の始祖である山内一豊と妻の生涯を描いた小説です。天才ではなくても、「きちんとした経験と謙虚に学ぶ能力さえあれば一国を手に入れる」ことができるのだということを描いた作品として、私はとても好きな作品です。

 その「経験」というエピソードの中で、体調管理と関連して印象深く覚えているのがある合戦の前夜のシーン。山内一豊は家臣に「腹を減らすな。きちんと百姓に金を渡して飯を道中に用意して貰え。」「体と火縄を絶対に雨に濡らさないように、油紙で体と銃を包め。」といった細かい指示を出します。理由は、「体調を壊すと戦意を喪失するから」。最初にこの小説を読んだのは二十歳の頃でしたが、読み返せば読み返す程、このシーンに山内一豊の豊富な経験に裏打ちされた重要な戦術を感じます。「体調を壊せば、100の力が半減どころか、十分の一以下になってしまう」ことを一豊は知っていたのです。

 多くの企業を調査し、社長以下経営陣の方々とお会いすることを生業としている私にとってはこのエピソードは極めて大きな納得感を与えるものです。なぜならば、それが加齢によるものであれ、不運な事故や病気によるものであれば、体調が悪くなると経営トップが冷静な判断を出来なくなってしまうケースをよく拝見しているからです。

 もちろん、レポートを書くアナリストの時代も、今のような立場としてのアナリストの時代も、体調というプライベートな部分に関することは直接申し上げることはできませ。しかし、以前から大きく方針変更した企業に対して疑問をもって、久々にお会いしてみたら、その背景にはトップの体調悪化があったことを知ることがあります。20年間の調査生活で、「ああ、これで判断を誤ってしまったのだ」と感じたことは多分何十回かに及ぶと思います。そうすると、経営陣、特に経営トップの体調管理が如何に重要なのかについては、経験として理解できるように思います。

《 体調悪化による無謀な「攻め」と極端な「守り」 》
 ケースバイケースですが、私の極く個人的な印象としては、
(1)冷静な判断が下せなくなって無謀な攻めや極端な守りに入ってしまう
   ↓
(2)頭が回転しないことを自分自身認識しているので部下や経営陣から図星の指摘を受けるのを怖がるし嫌がる
   ↓
(3)経営陣や部下も冷静な判断が下せないことをわかっているしプライベートなことなので余計なことを言わなくなる
   ↓
(4)全体に風通しが悪い中で全員が認識しながら奈落の底に落ちていく
というような図式が多いように思われます。

 よく戦国歴史物で豊臣秀吉の一生が好んで取り上げられるのは、まさにこれのわかりやすいサンプルケースと言えるからなのでしょう。加齢も含めた、組織のトップの体調悪化による判断の誤りというのは古代からの重要なテーマなのだと思います。

 とはいえ、トップにしてみれば、別に好きで加齢するわけではありませんし、好きで事故や病気で体調を崩すわけではありません。まさしく、「理不尽な運命」によるものとしか言えません。そうした意味で、先日ご紹介したアップル社のスティーブ・ジョブズ氏のスピーチにあったように「死」を意識することは重要なことなのだと言えるのでしょう。

 あのスピーチを拝見して、私は「ジョブズ氏の思想が非常に東洋的な輪廻観に近い」という印象を持ちました。その意味で、「川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず」と始まる「方丈記」や「平家物語」の無常観が精神構造に埋め込まれた日本育ちの人間がジョブズ氏のスピーチに共感を覚えるのは、意外なところでリンクしているのかも知れません。

《 トップの体調悪化をさせているのは実は無能な役員? 》
 「経営トップの経営管理」とは良く言われることですが、それの重要さを実感することは一見難しい。でも、本当にこれは組織と組織のトップと置き換えて考えると非常に理解しやすいことのような気がします。

 ただ、その時に単に事故や病気といった「運」によるものであるとか、トップ自体の「体調管理の責任」だけに押しつけるのも、また間違いであるように思います。傍から見ていると、「言うべきことを言わない・時代の流れについて行けない・自分が果たすべき任務を果たしていない」経営陣や役員のせいで、経営トップが本来ならば受けなくても良いプレッシャーやストレス、そして時間的、体力的な負荷をかけられているケースもまま拝見します。

 そして何よりもタチが悪いのは、それらの経営陣や役員がその罪を意識していないことです。思いっきり乱暴に言えば、「社長を殺しにかかっている」という認識が全くないわけです。自分は前任で良き役割を果たしていると誤解している。で、経営トップもそれを認識できない。経営リスクの分散というのは単に事業だけの話ではなく、こうした部分でのリスクも分散することであるとは思いませんか?。

 そう考えると、やはり外部から「それは違うんじゃないですか?」というウルサイ人は必要なのかも知れないと佐々木は己の言動を自己弁護しております(笑)。

 冗談はさておいて、私は経営トップでもなければ、役員でもない、単なるインチキアナリスト崩れではありますが、そんな脳天気な私でも今回の風邪で体調管理というものの真の重要さを少し理解できたような気がします。いよいよ本格的ダイエットをするべき時期かも知れませんね…..。でも、秋は食べ物がおいしいから、来年から始めようかな(苦笑)。

PS(番外編)
 映画「バック・トゥ・ザ・フユチャー」三部作の主人公として、日本でも有名なマイケル・J・フォックスさんがパーキンソン病に侵されていることは有名です。その彼がその人生観についてインタビューをされた番組がBS2であったのですが、それがYoutubeに投稿されています。
 番組のアップロードは著作権の問題がある行為なので、このメールでご紹介するのを少々躊躇うのですが、「問題があればyoutube側が削除するはずだ」ということにしてご紹介します。五分割された長いものですが、特に(4)と(5)はジョブズ氏のスピーチに通じる死生観が垣間見ることができます。

マイケル・J・フォックス自らを語る
(1) http://www.youtube.com/watch?v=rPmvncVL7xQ
(2) http://www.youtube.com/watch?v=NSAErgtSppk&feature=related
(3) http://www.youtube.com/watch?v=KyDGJWCBa8g&feature=related
(4) http://www.youtube.com/watch?v=uXGDrnFNBPM&feature=related
(5) http://www.youtube.com/watch?v=UASRq-_C380&feature=related

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