《 政治ほど経済の状況は悪化していない 》
 おおよその3月決算会社の決算説明会は終了したのですが、それでもまだ週に数社は説明会があることに加えて、数は限られますが4月決算(もしくは10月決算の中間決算)の説明会が行われています。二番底とも言える2009年秋以降の業績動向がどうなっているかを、直近までのデータまでで確認できるので、こうしたやや時期を外れた説明会は非常に情報源として重宝します。

 その説明会での内容から言えば、やはり業績の改善にはプラスの状況になってきているようです。業態もエリアもバラバラですので、あえて無理矢理一本化するつもりはありませんが、(1)客単価が3月以降プラスに転じているところが出てきている、(2)客単価の主な理由は一品単価ではなく買上点数である、(3)客数のマイナスが2月決算企業よりも縮まってきた、(4)主力事業へのてこ入れを継続している企業の業績回復が目立つというのが共通項です。

 まだまだ予断は許しませんが、純粋に企業業績だけに着目すれば、マスメディアが政治について騒いでいるほど日本の環境は悪くないような気がします。

《 二つのタイプの企業 》
 ただ、どうも佐々木個人の気分はあまり晴れません。というのも、(1)危機感を抱いて前進していこうと考えている経営者のいる企業と、(2)危機感を抱くどころか自社の置かれている状況を全く理解していない経営者のいる企業に、極端に二分されているように思えるからです。しかも怖いのは、(2)ではわかっていないのはCEO、COOレベルの人で、CFOとか経営企画の方は「かなり危険であるという状況」を理解しているということです。けれども、経営者に上訴するのはサラリーマンの御法度。ということで、誰も猫に鈴をつけないという状況が再発しています。1990年代の中盤に似ています。

 今、佐々木の頭の中にいつも浮かんで消えないフレーズは「勝ち残りよりも、まず生き残り」です。それくらい環境は厳しい。なにせ、すべての消費産業が過剰能力なんですから。にも関わらず、脳天気にも「うちは勝ち組さ、ワッハッハ」なんてことを自慢げに話す企業が増殖しています。頭を抱える日々です。

《 再び「ゆでガエル」化する企業達 》
 「「問屋と商社が復活する日」」で、力を失うと思っていた中間流通が実は痛みを伴う事業再編や、合併統合の末に、川下流通の鍵を握るまでの力を持ってきていることに驚いたと申し上げました。あれから中間流通の方とお話しする機会が多いのですが、その感はさらに強まっています。おおげさにいえば、「物凄い力を蓄えて、川下流通をコントロールできる状況にありながら、実は確信犯で馬鹿のフリをすることで、川下流通を手玉にとっているのではないか」とさえ思います。それほど、川下流通は中間流通とメーカーの支援なしに何もできない体になってしまっているところが多いように思うのです。

 このメールメッセージでは何度触れましたか忘れてしまうくらい書いた「回転差資金」の話ですが、上記の(2)に属する川下流通には膨大な「回転差資金」がいまだに存在するケースが多いように思います。その一方で、有利子負債が多く、手持ち現預金と短期有価証券といった手元流動性が薄く、純資産のレベルも低い。

 冒頭で状況は少し良くなっているみたいだとは書きましたが、まだまだ既存店増収率はマイナスです。五月の百貨店のように前年同期比を超えたところもありますが、ある百貨店の方は「ここで昨対を超えてしまうことで、『ああ、俺たちは間違ってなかったじゃん!。前のままでいいんだ!』と、とんでもない勘違いをする社員や経営者が出てくるのではないか」と本気で心配していました。わたくしも同感です。

 借金が多くて、純資産も手持ち現金も薄くてビジネスが継続できると言うことは、基本的に川下流通だけが持つ特殊性です。普通はメーカーでも中間流通でも、運転資金の調達に頭を悩ませながら事業をするものなのです。それを気にしなくて良いと言うことは、とんでもない落とし穴があるということでもあります。それは「売上が下がって、域内シェアが下落して、取引条件が悪化したり、取引を引かれた途端に資金繰りに行き詰まる」ということです。

 前にも申し上げたように倒産は赤字で起こるのではありません。資金繰りに詰まって起こるのです。そんなことは創業の時の苦労から百も承知しているであろう川下流通が、後継者にきちんと教えてこなかったのか、それとも創業者自体がぬるいお湯の中で「ゆでガエル」化してしまって苦しい時代を忘れてしまったのでしょう。まぁ、様々な大メーカーから、年に何度も何度も「視察」という名目の夫婦同伴での「接待旅行」漬けにされている(2)タイプの経営者にはそんなことはどうでもよいことなのかもしれません。「自分さえよければいい」のです。若い時の熱い心もどこへやら。今時の若者を批判なんかできませんね。

《 悪貨は良貨を駆逐する 》
 こんなことは金融業界の端っこでメシを食わせて頂かせている佐々木にとっても、「言わなきゃ良いものを」と自分ながら思って、このメッセージを書いています。しかしながら、倒産の惨めさを嫌というほど痛感した私にとっては、人ごとではありません。ただでさえ他産業よりも低い経済処遇の中で、非常に厳しい労働環境に耐えている川下流通業(もちろん外食を含めてです)の働き手が、このうえ、倒産とかまで経験させられるのであれば、それは絶対に避けたいと考えています。それは貧乏商人の小倅であったわたしの願いでもあります。

 しかしもちろん、こんな(2)のような企業経営者ばかりではありません。(1)の経営者も数多くいますし、その中には「自分の頭でろくに考えないで、賃金の安いパートとアルバイトをおだててアイディアを出させて、それで商売しとる経営者がいる。そんなのは経営者じゃなく、泥棒だ。」と、とても過激でステキなことを仰る方もいます。まだまだ捨てたものではありません。ただ、悲しいかな「悪貨は良貨を駆逐する」です。(2)タイプがいる限り、川下流通の地位向上はまだ当面難しいでしょう。

《 買収に値しない一部流通業 》
 今、金融業界ではM&Aとか資本提携を推進しようとしています。もちろん第一の理由としては、それらをすることで金融業界が稼げるからです。それは否定いたしません。「口八丁、手八丁でいい加減なこと言って、奴らは金ばかりが目当てだ。」、そう憤ってしまうような事例もあるのかも知れません。恥ずかしいことです。

 しかし、本当のところ、それよりも大事な第二の理由は、「川下流通は数ばかり多くても、差別化要因が少なく、結果的に消費者に良くて安いものを提供できる構造になっていない」からであります。兵站が拡大され、力が分散されれば目的達成は難しくなるのは当然です。かといって、人様の事業をたたんでしまえというほど金融業界の人間も不遜ではありません。ですから、1+1=2以上になる、再編統合はないかと毎日考えているというのが本当の本音です。

 今日は珍しく「龍馬伝」を見る前にこれを書いていますが、一国の政治家も、一企業の経営者も、高い視野から物事を見て、国家のために、企業のために、産業のために何ができるのかを考えることは不可欠でありましょう。私みたいなチンピラは永遠に経営者なんぞにはなれませんから、その意味では、それらは選ばれし人々だけができることとも言えます。とすれば「薩長連合」のように、「小異を捨てて、大同につく」という太っ腹なこともできる器が必要なことは間違いがない。私が「龍馬伝」に惹かれるのは、「みんなで力を合わして、このニッポンば守らにゃいかんちゅー時に、日本で、攘夷だの開国だの藩だのと仲間内で喧嘩して、どがんするぜよ!」てな台詞が何度も何度も出てくることです。まさしく日本の現状、流通業の現状を言われているように思います。

 しかし、我々金融業界が不勉強なのでしょうか、それとも川下流通業の肝っ玉が小さいのでしょうか。「大同につく」ことよりも、まずは自社のメンツと思う方々が多少なりともいらっしゃいます。その結果が、非常に素晴らしい業績を出している企業でも株価が一株あたり純資産を割れているという事実です。

 こんな状況であれば、どこの国でも企業買収やTOBが起こるでしょう。でも、そんな動きはない。何故?。日本の流通は買収しても価値がないと思われているからでしょう。これは日本国内のみならず、世界から馬鹿にされていることだということだと理解しなければなりません。だって、解散価値(=純資産)よりも買収価格(=株価)が安いならば、買ってから潰してしまえば大もうけなのですから。そういうのは欧米のファンドの十八番ですが、そういう動きがないということは、日本の流通には期待していないということなのでしょう。

《 今こそ、真の闘争を!(労組のビラじゃありません(笑)) 》
 いつものことではありますが、あおり立てるようなことを書いて申し訳ありません。これが佐々木の「芸風」でありますので、失礼の段はお許し下さい。しかしながら、株価と一株純資産の話は間違いのない事実です。いくら値段が安くても買わないのは何故か?。それは隠れた「毀損」があると疑っているからです。私は日本の川下流通にも、中間流通にも非常に素晴らしい価値があると思っています。けれど、それは見えなければ、無いに等しい。「見える化」しなければ、多くの人にその価値は見えないのです。「それでもいいんだ」という言い分もあるでしょうが、まさしくそれは「ひとりよがり」でしかなく、百害あって一利なしです。

 そんなことを最近、特に強く感じるようになりました。「おいが日本の流通変えるちゃるきに、おいに金ば出せや」と言い切れるような革命児が出てこないですかねぇ。

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