▼ ここんところ、やたらと「パーパス経営」という言葉をメディアで目にする。パーパスとは「目的」のことなので、「何を目指して経営していきますか?」ということらしいが、どうも「今更ですか?」という冷ややかな見方を僕は避けられない。

▼ しかもそれが、ESGやサステナビリティなどと繋がって、なんだかよくわからん話になってくるのが堪らない。何を言っているのか、そんなことはあまたの経営者が従業員が考えてきたことではないか。

▼ しかし、まてよ、という気もしてくる。それだけ当たり前の、これまでも考えられたことをカタカナ文字で言い換えなければならないほど、皆、自分が経営をして生きている目的を失っているということなのだろう。それがコロナのせいなのか、格差社会や少子高齢化社会や冷戦後の複雑な地政学のせいなのかはわからないけど、多分みんな迷っている。だから、こういう言葉が流行るのだろう。

▼ パーパス経営について本をお書きになった名和高司さんによれば、ドラッカーの「ミッション・ビジョン・バリュー」は20世紀型の資本経営であるのに対して、「パーパス・ドリーム・ビリーフ(信念)」は21世紀型の志本経営なのだそうだ。

▼ 志のある経営・ビジネス・商売、それを日本は古来から目指してきた。その意味では「資本」を「志本」と介するのはなるほどと思わないでもない。だが、そんなに多くの本が書店に並び、経済雑誌などで特集されなければならないことなんだろうか。どうも良くわからない。

▼ 企業研修では講義だけでは無く、しばしば新しい事業やビジネス、既存技術からのトランスフォーメーションなどをグループに分かれて数ヶ月かけて議論し、完成に導くということをするのだが、自分の専門分野に関しては素晴らしく高度な知識があり、市場調査やデータ収集力は素晴らしいのだが、結論が途中でスタックしてしまうことがある。これなどは、まさしくパーパスの問題なんだろう。つまり「何したいの?」というゴールがない。

▼ そんなときは次の三つの言葉で整理すると分かりやすい:What, Why, How だ。「What=何をしたいのか、Whay=なぜそれをしたいのか・するべきなのか、How=どのようにやるのか」、たった三つのことを考えるだけで明確になるし、持てる知識や技術が生きてくる。逆に言えば、理念も志もなく、やらされ仕事ばかりしているということなんだろう。若者が起業家に向かう気持ちが分かる気がする。

▼ とはいえ、本当は本稿で書きたかったのはタイトルにある皮肉っぽいこと、つまりDXやらクラウドやらBPRやらなどと同じbuzzword=バズワードが出てきよったわ、ということなんだろう。真実は一つとは言わないが、とどのつまりは命を与えられて生きていく中で、俺って何をしたいんだっけ?とそこが悩みだということだ。「俺って何をしたいんだっけ?」=パーパスなのだろう。とすれば、まぁ色々な三文字英語略語やカタカナ言葉が乱立するけど、結局は「君はどう生きるのか」っていう極めてテツガク的なことなんだよなあ、と。それをこねくりこねくりしているのが経営学だったりするとちょっと淋しいなぁ~と思った、それが本音かな。

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