• 「佐々木、ヤキが入ったなあ。似たタイトル多いじゃん」と言われそうだ。そう、これはEVの市場での衝撃を書いた「君はテスラに乗ったか」「君はBYDに乗ったか」という過去の「風待食堂」のタイトルの流用だからだ。申し訳ない、全然予想もしない新技術を体験した興奮を書くとき、これしか浮かんでこない。語彙力の少なさを恥ずかしく思う。
  • AI、生成AIが話題になって久しい。chatGDPの無料バージョンを使ったのは昨年のいつだったか。確かに「おお、これは!」と思ったのだけど、使って見ると、まぁ、あまりにも一般的な内容で(下図参照)、「これならWeb検索の方が早くて詳しい!」と有料プランへのアップグレードをやめてしまったのだ。AppleのSiri と同じで、「面白いだけオモチャ」が本音の印象った。
  • ところが、マスメディアやSNSで紹介される新技術のAIには思わず目を引き込まれる。特に、例えば祖父母の画質の悪い80年前の写真をカラー化し、しかも、それがプロンプト通りに動く動画を見たときは吃驚仰天!。「こ、これ、これは勉強し直さなければ」と唸った。この感動を30年来の友人に話したら、「佐々木はん、勉強なんてしたらあきまへんで。まずは試すことやね。使わへんでいても、そのスゴさは何もわからしまへんで」と。で、彼が教えてくれたのが、Googleアカウントを持っていれば、まずは無料で使えるGemini、NotebookLM、Gammma。よしここからだ。
  • 正直いって、Geminiは「chatGDPと同じゃないか」と、インターフェイスを見てガッカリしたのだが、プロンプトを入れて帰ってくる回答の精度が全く違うことに驚いた。先日バージョンアップされた2.5Proのレビュー版を使ったからでもあるが(以前は2.0)。下記の図は大学教員をやっている友人に頼まれた「アクティビストについて」の講義用レジュメを作るのに試したものだ。その結果、その除法量の多さとまとめ方、詳細さには舌を巻く。プロンプト通り、1)アクティビストが日本経済や企業経営に与える影響、2)2023年以降の事例の詳細、3)どういウェブを訪ねるとより正しい情報を生で読めるか、が3,000文字近い文章となって出てくる。「これならば、M&A専門のリサーチ会社なんていらないじゃないか」、それが率直な感想だ。
  • 筆者は驚くと人に話したくてしょうがないという、迷惑な性格を持っている。最初は妻に話したのだが、お風呂に入って、さぁもう寝ようというところで呼び止められたので、すこぶる機嫌が悪い。この成果を熱く語っても、「で、アタシに何を言って欲しいの?」。アカン、話すならば、やっぱりさっきの友人だ。LINEで連絡を取るとすぐに返事が来た。「ええでしょ。一ヶ月でGoogle One AI Premiumというプランが無料お試しできるから使うと良いですよ。あと、その返ってきたアウトプット、文章じゃないですか。読むの面倒でしょ。なら、返答のテキストをコピーして、Gammmaにぶっ込むとプレゼンつくってくれまっせ」。おお、良いことを聞いた。言われるままGammaを開いてぶち込んだらなんとパワポができた。10枚のプレゼンだ。その仕上がりを見て、さらにぶっ飛んだ。こんな風だ(三枚だけ抜粋した)。
  • 「うせやん!(=嘘だろう)」、僕は自室で呟いた。これ、もう講義のレジュメくらいならば、これで作れるじゃないか。今は10枚というパワポ枚数の絞りあるけどアップグレードすれば、30枚でも40枚でも作れるし、そもそも100分講義だとすると、100分÷一枚あたり説明時間4分=25枚のプレゼンで十分だ。それを越えると、レジュメをなんとかこなすのに一生件目になり、内容を聞き手に確認して講義ができないから。
  • しかもこいつは言語だけじゃなく、「で・ある体」か「です・ます体」まで選べて、プレゼンの中の文章の量、写真をどこから取得するか(Webか著作権があるものも含むか、著作権フリーのものだけを選ぶかなどまで)細かく設定できる。「こんなもん、大学教員が汗水垂らして先行研究読まなくても、AIに代わりに検索して、読ませて、気に食わないところを何度もプロンプトにして繰り返し聞き返し、その都度パワポを作らせ、後でまとめりゃ終わりじゃん」と、呆気にとられる。
  • ほいでまた、さっきの友人にこの「感動体験」を伝えたら、リモート画面の向こう側で彼は「ニヤリ」と笑って、「ウチ、今、NotebookLMに凝ってますねん。面白いでっせ]というので、早速試す。どうやらファイルや動画などから、そのサマリーなどを作るAIらしい。AIの得意分野だ。で、思いっきりイジワルをしたろ、と2023年に企業研修ように作ったレジュメを認識させることにした。PDFはあるけど、当然、要点しか書いていない資料だ。その行間を説明するのが研修の商売である。よし、こいつをNotebookLMに入れたろう。このアプリもそうだが、とにかく最近のアプリはインターフェイスがよく、iPhone同様に説明書読まずにサクサク進む。快適だ。そして生成されたのが、「要約」「マインドマップ(内容の構造分析)」、そして、「音声でのまとめ」だ。その順番に下にコピペしてみる。
  • この中で特にすごいのが、「音声概要」だ。ここでで聞かせられないことを心底残念に思う。でも、一方でこの7分半の音声概要聞いちゃうと、120分の私の研修はなんだったのということになってしまう。いやいや、やめよう、聞かんでよろしい。
  • ただ、さすがにその友人も驚いたようだ。いや、音声概要作れるのは彼が試して知っているのだけど、120分の研修内容が7分半の音声、しかも女性と男性がディスクジョッキーするように語る口調とPDFには書いていない「ほほ~、それは小売業の常識を覆すような話ですね」という合いの手や、二人の楽しげな話し方があまりにも自然なのである。これはもうラジオ番組、だ。
  • で、次に思い立ったのが2003年に証券アナリストの時代に発刊した200ページの月例レポート。もう古いし、長いし、重いし、でスキャンしてPDFでハードディスクの肥やしになっていて、多分、自分が死ぬまでほぼ99%の確率で読み返さないシロモノ。それをのNotebooKLMで処理した。はい、参りました。見事に当時考えていたことが再現され、音声概要も10分強。マジかよ。
  • で、このNotebookLMがchatGDPの時とは違うのは、使う目的がさっと思いついたことだ。経産省、財務省、金融庁など省庁の出すペーパーは詳細で一次情報なので極めて正確。だから、それの孫引き資料を読むよりも、この一次資料を読むのが一番調査研究としては正しい。しかし、とにかく象徴の報告書関係は長い。あとカラフルなのが好きなのか、プレゼンテーションになっているものを長い間読んでいると目がショボショボしてくる。必要だけど、読むのが嫌な資料、それが省庁の報告書だ。あと、学術論文。大切なのはわかるが、定型パターンを経て書くので、結論に至るまで我慢して読み切るのが辛い。これを「音声概要」で要約させて、スマホにいれて聞けばいいのでは?。
  • ということで経済産業書で目についた大事な内容で、長そうで、つまなそうな(ゴメンナサイ)「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」を選んで読み込ませてみた。結果は…やはり凄い。下に載せてるマインドマップはホンモノは「+」部分を押すとどんどん構造内容が展開され、この調査書がどういう仕組みになっているかわかる。それだけで、このクソ長い(失礼!)文章を読む手間が省ける。何よりもっと手間が省けるのはやっぱり「音声概要」だ。わずか6分で生成し、6:48の「かけ合い漫才」にまとめてくれた。ハッキリ言って、自分の研修資料の時ほどは面白くない。ただ、これは概要の作り方が悪いのではなく、統計資料がふんだんにはいるので、どれを使うかの選択が必要なのと、自分が研修で話した内容との比較とは違い楽しく無い。それだけだろう。200ページの資料を7分に要約して聞けるのは、メチャメチャ有り難い。
  • ここまで来ると他のAIも使ってみたいのだが、なにせ相当なものが出回っている。なにせ、それらの紹介の無料ウェビナーセミナーも目白押しだ。というか、Geminiに「XXXとかXXXとかで非常に有益であり、評判も高く、無料もしくはお試し期間があるAIを詳しく、箇条書きで、アクセスすべきURLも含めて教えてください」と入力すれば、あっというまに適合するAiエンジンを探してくれる。AIがAIを探して推薦するのだ。いやあ、参った。
  • さらに書きたいことがある。筆者のOutlookがトラブルを起こした時の解決だ。システムトラブルの際に誰かに訊いて解決することは極めて少ない。使っているデバイスの性能、OSのバージョン、Outlookのバージョン、IMAPメールの同期フォルダ、プロバイダはどこか、回線はどこか、など場合の数が多すぎるからだ。この奮闘記は別の機会に譲るが、結論から言えば、実に6日間、一日14時間ずつ調べても解決しなかったのが、Geminiと10回くらい問答をしたら、なんとサックリサクサク、4時間で復旧した。こうなると、もはやシステムのコールセンターなんか不要、チャットも不要。AIさえあれば、なんでもわかる。
  • そんな中で筆者が密かに考えているのが(ここで書いているので密かじゃないんだけど)、某有名な電子書籍の内容をローカルに落としてきて、それをPDFにするプログラムを作れないか、だ。そもそもAIが出て大喜びしたのは、複雑なプログラムをミスなく書かねばならないプログラマーである。どうして筆者がそれを作れないわけがあろうか(いや、ない)。ただ、これは当然、電子書籍の使用約款に引っかかる。だから、「やろうと思えばできるかもねえ」とだけ言っておく。想像の世界だし、実際にやってないから、ルール違反ではないだろう。
  • ただ、ここまでAIが進化し、さらに進化すると「本当のこと、本当のもの」とは何かが分からなくなるという怖さは感じる。フェイク動画が話題を呼んだのは、相当前だけど、もはや祖父母の白黒写真から動画を作れる時代だ。どんなものを見ても、それがホンモノかなんて、信用できないだろう。となると、いつもここで書いているように「対面で会って、話したこと」が一番高精度・信用できることになり、それはイコール「客のところに行って話をしてこい!」というスタイルにビジネスマンが戻るという現象を呼ぶだろう。何でもプロンプトを入れて訊くことはできるし、素晴らしいプレゼンも作れるが、心が動かない。また、その信憑性も疑わしい。
  • とはいえ、何よりも今まで存在した仕事が、これは本当にAIに置き換わるだろう。だから、最近早期退職を積極的にしたり、人員整理する企業が増えているのか?。そう考えると、AIはまさしくSF作家が書いたディストピアを予見させることになってしまう。何かの映画だったか漫画だったか忘れたが、肩の上に鶏が常に乗っていて、どうすべきかとか外国語での会話でなんでもヘルプをしてくれるという物語があった。多分、そういう時代が間近に来るのは間違いないんだろう。

                            (了)

One thought on “2025/5/17 君は生成AIを使ったか”

  1. 佐々木さん、
    驚きの状況が手に取るように伝わってきました。実は、私も使って見て、目茶苦茶驚いた1人です。
    世の中、一体全体どうなっているの?と。

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