- 2025年も半分の六ヶ月が過ぎた。「もう」なのか「まだ」なのかは人それぞれだろうが、あまりにも多くの出来事が詰まって、自分でも整理出来なくなっている。今回は振り返りつつ、それらの出来事が今どうなっているかという現在状況を確認したい。
- まずそのために各国の株価を確認しよう。下にStock Brainの六ヶ月複合チャートを貼り付けた( https://nikkei225jp.com/ 期間六ヶ月 )。何よりも目立つのは4月頃の各国株価指数の大幅な下落だ。ちなみに紫色のVIXだけが上昇しているが、これは「Vokatility Index、恐怖指数」で、一言で言えば「高い=先行き不透明強いという投資家心理」だ。VIXは通常、10-20くらいの数値だが、この4月は21から一気に52までに上昇している。言うまでもなくこれは2月のいわゆる「トランプ関税」の発表以降、4/11にトランプ関税(相互関税)の一時停止を発表するまでを反映している。ちなみに4/11にトランプ氏は「(株価)買い時だ」と発言したが、実際、VIXは37迄大幅に下落しており、野党が大統領や閣僚がインサイダー取引に関わっていないか調査しようとしたのも頷ける話だ。
- ちなみにここまでの動きはざっくり以下の通りである。
時期 | 出来事(ほぼ時系列) |
1月 | ・トランプホテルラスベガスのテスラサイバートラック爆発事故 ・韓国ユン・ソンニョル大統領拘束の動きから拘束、起訴へ ・USスチームへのトランプ氏の阻止決定 ・ロサンゼルス大規模山火事 ・イスラエルとハマスの停戦合意 ・トランプ大統領就任式 ・米国内務省がメキシコ湾を「アメリカ湾」に改称と発表 ・米軍ブラックホークの民間追突墜落地事故、民間機住宅地墜落事故 |
2月 | ・トランプ完全発動(カナダとメキシコ25%、中国10%) ・パナマ運河が中国の一帯一路政策からの離脱表明 ・カナダとメキシコのトランプ関税の一ヶ月延期発表 ・初の日米首脳会談 ・全世界に鉄鋼製品とアルミニウムに25%のトランプ関税発表 ・ウクライナ原子力発電所へのロシアドローン攻撃 ・オーストラリアで23歳シリア男性が歩行者6人に無差別殺人 ・米国政府サイトから「台湾独立支持せず」の文言削除 ・ドイツ総選挙で野党統一会派が第一党に ・トランプ氏が富裕層向けに7.4億円で永住権を得られるカード販売を発表 ・トランプ氏とゼレンスキーのホワイトハウス会談(喧嘩別れに終わる) |
3月 | ・ロシアが日本政府要人の入国禁止措置第三弾を発表 ・7&IHDの井坂氏退任、新社長にデイカス氏就任発表 ・韓国ユン・ソンニョル氏釈放 ・国際刑事裁判所が取りピンドゥテルテ前大統領に逮捕状(人権犯罪の疑い) ・タジキスタンとキルギスの国境線980km確定 ・米国立公文書館はJFケネディの非公開記録を全面公開 ・トルコのエルドアン大統領の政敵イマモール氏を逮捕 ・ミャンマーでM7.7の大地震発生 ・日本の銀行によるバーゼルIIIの導入完了 |
4月 | ・フィンランド、ポーランドやバルト三国に続き対人地雷禁止条約から脱退 ・ハンガリー、国際刑事裁判所から脱退 ・トランプ関税の一時停止を発表 ・大阪で日本国際博覧会開幕 ・ローマ教皇フランシスコ死去 ・インドとパキスタン領有権争いしているカシミールで観光客26人が銃撃 ・米国カルフォルに芦生がドル換算GDPで日本を抜く ・ロシア軍中将のモスカリク氏死亡、ウクライナによる爆殺の疑い ・2024年世界軍事費が前年比9.4%の2.7兆ドルと過去最高だた判明 |
5月 | ・英国イングランド地方選挙で反移民を掲げる右派リフォームUKが大勝 ・トランプ関税で輸入自動車部品に25%の追加関税発動 ・オーストラリア下院総選挙で与党が単独過半数を得て勝利 ・シンガポート総選挙で与党が9割議席確保 ・ウォーレン・バフェットCEOから退任発表 ・ルーマニアでやり直し大統領選挙実施され、欧州連合との連携を維持 ・トランプ氏、不法移民収容施設としてアルカトラズ島の再利用を指示 ・トランプ氏、外国産映画に100%関税かける方針示す ・スカイプがサービス終了 ・国際金融協会によると世界の債務残高が3月段階で4.6京円と過去最大 ・コンクラーベでプレヴォスト枢機卿が強硬に選出 ・米英両政府が二国間貿易協定を結ぶことで合意 ・ロシアで対ナチス・ドイツ戦勝80周年記念パレード ・グリーンランド自治政府に米国が自由連合協定締結提案と報道 ・米国とイランが核開発高官協議を開催 ・トランプ氏が薬価大幅引き下げの大統領例に署名 ・フィリピン国政地方選挙でマルコス大統領支持派が多数を維持 ・アルゼンチンが外国人の入国と滞在への規則を厳格化の発表 ・ベルギー政府が大津原発政策を撤回方針発表 ・ムーディーズが米国政府国債の格下げ(全格付け機関で最上位から転落) ・台湾で第三原発の稼働を中止し、原発ゼロへ ・教皇レオ14世の就任ミサでトランプ・ゼレンスキー会談が再度行われる ・英国とEUが離脱後初の公式首脳会議をロンドンで開催 ・米露首脳電話会議でプーチン大統領が停戦譲歩せず、トランプ氏仲介降りることを表明 ・WHOがパンデミック条約を採択(米国は脱退表明したため欠席) ・オーストラリア野党国民党が最大野党自由党との連合を解消 ・インドネシア0.25%金利引き下げ、四年ぶり ・ワシントンでイスラエル大使館員二名が銃撃で死亡 ・トランプ氏がハーバード大学へ留学生受入機関認定取消し発表 ・中国はインターネット利用専用身分証制度を導入発表 ・世界食糧計画(WFP)がガザの七万人以上の子供が深刻な影響失調と発表 ・ロシアとウクライナ300人ずつの捕虜交換 ・ASEAN首脳会議で東ティモール加盟プロセスの迅速促進を確認 ・英国リバプールのサッカー優秀祝賀パーティーの群衆に車が突っ込む(テロ?) ・イスラエルはガザ一箇所で配給開始と主張したが、中立性と規模に疑問 ・フランスで安楽死法案可決 ・ゼレンスキー氏、ドイツ首相と会談し、長射程巡航ミサイル供与を協議 ・中国外務省が、米国務省が一部中国人留学生ビザ取消し開始したと発表 ・アジア安全保障会議がシンガポールで開催 ・トランプ氏、鉄鋼アルミニウム製品追加関税を50%に引上表明 ・日本、豪州、フィリピンがシンガポー津で防衛相会談を開催 |
6月 | ・ポーランドでEU懐疑派のナブロツキ氏が勝利 ・ウクライナ軍がロシアのシベリア軍基地を無人攻撃機で攻撃成功 ・ロシアが和平湾を巡る覚書をウクライナに提出 ・オランダのスホーフ首相が極右政党離脱による連立政権崩壊で引責辞任 ・政権離脱したイーロンマスク氏、トランプ氏の減税法案に強い言葉で非難 ・韓国 李在明氏が韓国大統領就任 ・EUはブルガリアがユーロ導入基準を満たしたと発表 ・国連安全保障理事会はガザでの停戦決議案を否決(米国の拒否権発動) ・NATOが加盟国の国防費の5%への引上げを提示 ・銀価格が1トロイオンス36.3ドルと13年ぶり高水準 ・ロシアはウクライナ全土に空爆実施(無人機400機、ミサイル40発) ・日本とEUが産業強化の「日EU競争力同盟」創設調整に入る ・米国ロサンゼルスで移民税関捜査局への抗議活動に対抗してトランプ氏は州兵2千人を派遣するが、カリフォルニア州知事がこれを批判 ・トランプ氏によるイランなど13カ国からの入国禁止措置が発動 ・英国が2028年までの中期歳出計画を発表するが、国防費や医療費増額が移民対策や対外援助を圧迫することが判明 ・韓国による北朝鮮への拡声器による宣伝放送を停止、北朝鮮も停止した模様 ・インドでエアインディア機が墜落、大惨事 ・イスラエルがイラン核施設など100箇所以上の標的を攻撃し、翌日イランはその訪服としてイスラエルにイランが攻撃 ・米国が34年ぶりのワシントンでの軍事パレード開催 ・英国秘密情報部(MI6)の長官にメトレウェリ氏を任命し、初の女性長官 ・G7サミット開催するが、イラン問題でトランプ氏は初日で帰国し、トランプ氏はイランの核施設攻撃を検討と発表 ・米国国防省、日本を含むアジア同盟国に国防費をGDP5%まで増額必要を表明 ・英議会下院は安楽死法案を可決 ・米軍、イラン国内三箇所の核施設を空爆と発表、イラン外相は非難 ・米国のトランプ関税、鉄鋼アルミニウム製品に洗濯機や冷蔵庫などの白物家電を加える |
- 米国の関与した部分を赤字にしたのだが気づくのが、年初の連日話題をさらっていた頃に比べて、6月のイラン攻撃などをのぞけば米国が取り上げられる回数が相対的に減少しているように思えることだ。元データがWikipediaなのでヌケモレがあることは考慮に入れねばならないが、それでも欧州やアジアといった米国以外での動きが増えているように感じる。これはメディアでほぼ毎日、トランプ氏の発言や各地の紛争の悲惨な映像が流れているのに対し予想外である。また、意外なのは中国も、である。株価チャートの中国株は大きく上昇しており、景気が悪化しているという話題との整合性がとれない。盛んに報道されている中国の自動車(EV)技術、レアアースなどの資源、半導体などの基幹産業の好調を表しているのではないかという推測も与える。また、やたらと政治関係と少子化の話題で「絶望的な国、日本」という印象を住んでいる我々は毎日マスメディアの報道で目にするが、株価の動きだけを見れば中国、米国についで、日本の株価の戻りも大きいことは予想外だ。
- 実際、上記のチャートでもわかるが、円ドルだけをSmart Chart Plusで抜き出してみると、年初来最も円が安かった157円に比べると下落していることは事実だが、直近でも143円と9%弱の円安に留まっているのが現状だ。

- 気になるのは、1)ロシア-ウクライナ、2)イスラエル-ガザ、3)イスラエル-イラン、4)インド-パキスタンといった、世界的な紛争・戦争だ。しかし、1)は2014年のクリミアを巡る紛争が2021年から再燃したわけだし、2)3)はイスラエルvsパレスチナとアラブの対立で1948年第一次中東戦争・1956年第二次中東戦争・1967年第三次中東戦争・1973年第四次中東戦争、1979年イスラム革命、1980年イラン・イラク戦争、1982年第五次中東戦争(レバノン内戦)、1990年湾岸戦争という流れから考えると、中東紛争が35年ぶりに起きたという時間軸的な驚きによるものかもしれない。ただ、そこに中南米やクルド人などの移民・難民問題が絡み合うことで、全世界的な複雑な感じを与えているようにも感じる。実際、英国がEUを離脱したのも移民・難民問題が原点だし、欧州各国の極右主義台頭もそれが背景にある。


- そして日本。ポジティブ、ネガティブ両方が絡み合い、一口では評価しにくい。ポジティブなのは言うまでもなくインバウンド需要の増加だ。円安がこれに拍車をかけたため、日本としては「痛し痒し」ではあるが、とてつもないインバウンド需要が起きていることは明らかだ。主要駅である東京駅、広島駅、福岡駅、仙台駅などで数多くのインバウンド客の大きなキャリーケースにつまづきそうになった人は多いだろう。驚いたのは、閑散としているイメージの強い青森駅もインバウンド客が多く、近くの「ねぶたの家 ワ・ラッセ(青森ねぶた記念館)」の70%位の入場者数がインバウンド客だったことだ。青森の人はなんと失礼な、と思うだろうが、まさか青森駅にあれほどの外国人客が着ているとは思わなかった。そして、これは空港でも同じで、とにかく日本全国どこの空港でもインバウンド客が多い。先日の新聞記事では「高島屋など百貨店のインバウンド需要が落ちている」と書かれていたが、タクシーに乗ったときに運転手さんにお訊きすると、1)観光タクシーとしての需要は依然として絶好調、2)GOやS.RIDEなどのナビが装備され、スマホの通訳機能で意思疎通出来るため実によく乗車してくれる、3)SNSやスマホの普及で地理に詳しいはずの運転手さんでさえ知らないような穴場の観光地やレストランに行く顧客が多い、とのことで、インバウンド消費も「モノからコト」に移り変わっているようだ。



- 一方で上半期の世界経済状況を背景にした日本の動きの中で個人的に興味を持っているのが、防衛装備・防衛産業である。言うまでもなく第二次世界大戦、太平洋戦争の敗戦により日本は武器製造のすべてを禁じられた。1967年・1976年の「武器輸出三原則」はその一つとして有名だが、これとても2014年には「防衛装備移転三原則」として緩やかなものに生まれ変わっている。具体的には、日本の「リチウムイオン電池式潜水艦の静粛性性能」は世界で高い性能を誇るが(=エンジン音がしないため、発見されない)、それらは三菱重工業や川崎重工業などで生産されている。そして、上記の上半期の出来事にもあるようにNATO内部も米国のアジア同盟国に対してもGDP5%の防衛装備を要求している。ちなみに5/23まで幕張メッセで行われた日本最大級の防衛装備品展示会で二倍の規模のブースを設け、前回の1.6倍の企業や団体が出展し、うち日本勢は169団体と倍増したと述べている。こに関しては色々な意見があるとは思うが、この世界情勢が続けば、日本の防衛産業の全体における精算金額は上昇する可能性が高い。


- 生臭い話になってしまったので、ちょっといい話だと思うことを書いてしめくくろう。出所は日本語教師をしている友人だ。少子化が進み、日本という国家の先行きを懸念する声が多い中、ある点で日本に来る学生もまた増えているという。その大きな理由は米国大学への留学のしにくさや日本の大学の相対的な安さなのだが、留学して良かったと思って居るのは「何でも誰とでも話せること」だそうだ。例えば中国と香港と台湾の学生同士や、イスラム圏とユダヤ圏の学生同士や、アジア圏の学生同士がなんの壁も無く話したり、笑い合ったり、食事をしに行ったり、時には論争を自由にできることだという。確かにそういう光景は講義でもそれ以外でもキャンパスで見たことを良く覚えている。個人的には、これを「文化的な永世中立国」に日本がなっていることなのかと感じたりしている。日本に在住している人間が気づいていない意外な強みが存在しているのかもしれない。



(了)