• ハロウイーンも終わり、立冬も過ぎ、いよいよ今年も押し迫ってきた。この時期には二つの楽しみにがある。日経トレンディ誌の12月号に掲載される「ヒット商品ベスト30」番付と「ヒット予測100」。そしてユーキャンからT&Dにスポンサーが代わった「新語・流行語大賞」だ。マーケティングリサーチや消費分析数々あれど、11月にこの二つをみておけば、世の中で「幅広」な意味で消費に何が起こっているのかを見るのは済んでしまう。実に楽しみな企画だ。ちなみに昨年2024年の「ヒット商品(実績)」は以下の通りだ( https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20241031_4/ )。トップの「新NISA&「オルカン」投資」、9位の「Temu」あたりは既に懐かしくなっているかもしれない。一方で、「ん?、そんなのあっったっけ?」というものも相当数ある。消費の移ろいやすさを感じる。

★2024年ヒット商品ベスト30

順位商品名ヒットの概要
1新NISA&「オルカン」投資投資枠の拡大、無期限化などNISAの大幅拡充で投資熱の高まりが加速。初心者向きの全世界株式投信に1兆8000億円が流入した
2大谷翔平売れ経済波及効果は全世界で1168億円以上に。本人公式グッズやCM出演企業の商品だけでなく、プライベートの愛用品もよく売れた
3VポイントTとVが統合し、約8600万人規模の「第5のポイント経済圏」が誕生。提携店舗を約3万店増やし、抜群のお得感で会員数も伸ばした
4「リードルショット」シリーズ刺激の強さを6種類から選べる異色の美容液が国内だけで387万本を販売。徐々に痛さを上げる「レベルアップ売れ」も生んだ
5名探偵コナン100万ドルの五稜星(みちしるべ)長寿アニメ映画が、同じ原作者の「まじっく快斗」などとのチームプレーで興収150億円を突破。関連コナングッズの販売も好調
6キリンビール晴れ風爽やかな缶デザインと「寄付」という斬新な付加価値が若者にも好評。年間550万ケースを販売する見込みでビールブランドで3位群へ
7スイカゲーム見た目のゆるさの割に意外に戦略性が高かった「落ちゲー」が1100万ダウンロードを達成。“偽物”が多数登場する騒ぎにも
8シンカトリ火も電源も使わない、常識破りの設置型蚊取りが発売7カ月で270万個を出荷。単純明快な取り扱い方で消費者の支持を獲得した
9Temu中国発「格安越境EC」の新顔がブレーク。日本国内からの直送システムを確立し、短納期&低価格化を実現した
10メルカリ ハロメルカリ連携&初期登録不要でスポットワークのハードルを一掃。約半年で登録者は800万人を超え、市場の大幅拡大に寄与した
11未来のレモンサワーレモンスライスをフルオープン缶に封入するという新体験に人々が熱狂。関東甲信越での期間限定販売だったが全国的な話題に
12劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦登場人物の心情やバレーボール競技の描写がともに秀逸で人気が拡大。「推し活」との相性もよく、興収が115億円を突破した
13もちっとおいしいスパゲッティ味や食感の進化が数十年なかった乾燥パスタ市場に、弾力がある食感を持ち込んでヒット。発売半年強で500万個を売り上げた
14アセドロン珪藻土(けいそうど)に着想を得て、従来の吸湿速乾をはるかに超える性能の下着が誕生。猛暑を追い風に7カ月で90万枚出荷した
15鰻の成瀬最安1600円の価格設定と専門店以上のコスパの良さが消費者に大受け。ニーズに応えるかたちで、240店以上もオープンした
16トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パック泡をスプレーして流すだけの簡便さが受け、1年間で計画の2倍以上となる1300万本を出荷。トイレ用洗剤市場全体を活性化した
17Osmo Pocket 3手ぶれを気にせず一眼並みの高画質で撮れるカメラがVlog需要を総取り。ビデオカメラ市場で金額シェア29.6%のトップに立った
18バレルレッグジーンズ体形をきれいに見せられるジーンズが、GUでの販売をきっかけに定番化。以前の「ガウチョパンツ」に近い売れ行きを見せた
19ゴリラのひとつかみふくらはぎケアに絞った買いやすい健康家電が、製品名のインパクトもあり大人気。シリーズ計50万台を受注した
20クロスブレンドカレースパイス感推しの新機軸カレールウに親も子も食い付いた。定番ひしめく市場ながら、累計販売数は1000万個の大台に到達した
21エッセンス スキングロウ ファンデーション美容液中にファンデーション成分を入れる「逆転の発想」で話題に。8カ月で50万個超を出荷し、ファンデ市場を復活させた
22薄皮たまごぱん王道の総菜パンながら小ぶりで、食事を軽く済ませたいタイパ需要に大はまり。9カ月間で出荷数は累計1500万袋を超えた
23アサイーボウルハワイで人気の「アサイー」がSNS映え重視により約10年ぶりに日本でブーム。自宅用キットは前年同期比921%を記録した
24コリコランワイド肩に羽織るだけで、1日中肩こりを癒やせる高周波治療器が人気に。「ながら」需要にマッチし同社計画の約5倍を販売した
25忍者めし 鉄の鎧ハードグミをさらに糖衣でコーティングした新食感で評判に。計3回の販売ではいずれも1週間で品薄状態になる爆発力を見せた
26SHIBUYA TSUTAYAスクランブル交差点のランドマークが“推し活タワー”として刷新。インバウンド人気も高く、来館者はリニューアル前の約2倍に
27JRE BANK鉄道運賃・料金が4割引きなど、既存の銀行サービスにない豪華特典が大きな話題に。口座申し込みは5カ月で約41万件に達した
28魔法のかまどごはん新聞紙でご飯が炊けるユニーク炊飯器が災害などで大注目。約1年間で年間目標の4倍超となる1万3000個を販売した
29布製ランドセル布製で軽く、比較的安価なランドセルが認知拡大。フットマークは売り上げ前年比1.4倍で、イトーヨーカドーなども参入した
30アライ脂肪の吸収を抑制する内臓脂肪減少薬が満を持して登場。要指導医薬品にもかかわらず、6カ月で年間計画の8割に到達した
  • 一方で、「ヒット予測」は以下の通り。どうだろう、2025年に流行ったものは…と探すと、1位「肩掛けプライベートAI」、9位「電動モペッド&格安バイク」、12位「シャングリア(沖縄)」、23位「置き配」あたりは話題を「かすって」はいるけど、メイントレンドそのものではなかった。AIであれば「悩み相談相手に使われるほど身近になったAI」だし、「電動モペッド」ではなくLUUPだった。「シャングリア」はヒットと言うよりも「期待外れ」として認識されている中、「置き配」は確かに配送負荷という社会問題の随所で出てくる。げに予測は難しいものよ。

2025年ヒット予測ベスト30

順位商品名概要
1肩掛けプライベートAI“目”と“耳”で毎日を記録する第2の脳
2サブスクスーパーバンドリング「サブスク貧乏」からの脱出
3ライトアニメ縦読みマンガが次々と映像化
4おべんとPONスぺパ志向の弁当用冷食
5ファスティングバー疑似ファスティング
6クレカでタッチ乗車鉄道やバスの割引が多様化
7ポーカー駆け引きを楽しむマインドスポーツ
8HD-2D版
ドラゴンクエストIII
新しいロト伝説の幕開け
9電動モペッド&格安バイクポスト50㏄原付き
10Jiffcy(ジフシー)テキスト“通話”アプリ
11手間をかける新コンビニ冷食
クックイック
21「洗車先進国」韓国から続々と上陸
K-洗車グッズ
12沖縄北部の新ランドマーク
JUNGLIA(ジャングリア)
22食品スーパー併設型BBQ場
ロピアでバーベキュー
13韓流インナービューティー
飲む韓国コスメ
23物流問題解決の切り札
得する置き配
14米国で人気爆発中の “プチテニス”
ピックルボール
24社会貢献できる位置ゲー
インフラゲーム
15脱・罰ゲームのお酒
プレミアムテキーラ
25タクシー不足解消の切り札
日本版ライドシェア2.0
16手ぶら観光の新たな味方
スマート駅ロッカー
26「腸活食品」ファイナルアンサー
タンサ脂肪酸
17親もうれしい子供専門ビル
こどもでぱーと
27超お手軽スタートアップ投資
非上場株投信
18任天堂9年ぶりの大型ルーキー
Nintendo Switch“2”
28特定小型原付きの四輪版
免許不要四輪EV
19“塗り洗い”シャンプー
THE ANSWER
29「ポケカ」をデジタル収集
ポケポケ
20体験型歴史資料館
ニンテンドーミュージアム
30カカオショックの救世主
プレミアム準チョコ
  • 新語流行語大賞2024は以下の通り。大賞を受賞したTOP10は「なんだっけ?」と思い出すのに四苦八苦し、ネット検索をかけるほどだが、ノミネート一覧の方がハッキリ覚えているものが多いかもしれない。例えば「インバウンド」、「裏金問題」、「カスハラ」、「新NISA」、「トクリュウ」、「マイナ保険証一本化」、「令和の米騒動」など。新語流行語大賞はその選考の仕方に若干の批判があるが、なるほどこうしてみると意外とその場限りで忘れるものが多いのかもしれない。とはいえ、「ふてほど=不適切にもほどがある」でメインキャストの一人であった「河合優美」さんが2025年は大活躍したことは、確かに先見の明もあるのかもしれない。
  • さて、今年の11月に発表になった方だ。こちらは、まだ日経トレンディが発売されているので著作権の問題からも直接・詳細に一覧表を掲載するわけにはいかないが、メディアに露出されているものをちょっとお借りしよう。まずは「2025ヒット商品ベスト30」から。FNNプライムオンラインでは動画とともにリストが掲載されているのでそれを拝見しよう( https://www.fnn.jp/articles/-/954774 )。1位「関西万博&ミャクミャク」、2位「国宝」、3位「Nintendo Switch2」は押しも押されもせぬ圧倒的トップ3だ。特に「何があたるかワカラナイ」という点では、あれほどまでに採算がとれるか非難囂々で、おまけにキャラクターが「気持ち悪い」と言われっぱなしだった「関西万博&ミャクミャク」が成功した驚きったらなかった。そして、一方で「映画館で見るべき」という3時間長尺の「国宝」と並んで、この二つが与えるインプリケーションは「バーチャル>リアル」ではなく、「バーチャル<リアル(実体験)」への回帰なのかと感じる。「リモート疲れ」「人と会わないのは楽なようで実は精神的負担が高い」という、社会問題を端的に表しているように感じる。「なんで業務じゃないのに会社の宴会にでなければならないんですか?」「指導をするとハラスメントと認識される」という現代社会の特色だが、実は社会のムード自体が息苦しいと思っている、その証左がこの二つではないかと思うのだが、どうだろう。万博でのインドネシア館の「ヨヤクナシデスグハイレル~、マチジカンナシデスグハイレル、ススンデクダサイハヤクハヤク」という彼らの苦心の集客ソングとダンスがブームになり、それを楽しんだ来場者が多かったことや、電車トラブルで一晩を会場で明かさねばならなかったことは「疲れた」「電鉄会社の対応が悪い」と苦情の元になった一方で、各パビリオンからの親切なサポートや日の出に感動して「オールナイト万博」という名称がついたことなどは、こうした予測不可能なヒューマンリレーション的なものを実は臨んでいる人も多かったのでは無いか、という意味で意義深く感じる。とすれば、世間でさんざん言われる「Z世代気質」やら「若年世代の思考回路」などの分析も、鵜呑みにしない方がいいのかもしれない。

★2025年ヒット商品ベスト30

1位  大阪・関西万博withミャクミャク
2位  国宝
3位  Nintendo Switch 2
4位  平成女児売れ
5位  せいろブーム
6位  麻辣湯(マーラータン)
7位  THE ANSWER
8位  長崎スタジアムシティ
9位  Jiffcy(ジフシー)
10位 アレンジ系希釈飲料
11位 OC Handy Compact  
12位 スープ激うま!
13位 ラブブ
14位 「お~いお茶PURE」シリーズ
15位 ポケポケ
16位 クイックル 洗面ボウルクリーナー
17位 アサヒ ザ・ビタリスト
18位 辛ラーメン トゥーンバ
19位 KIRE-NA
20位 カップ入り お茶づけ海苔、同 さけ茶づけ
21位 スマートリング
22位 エリクシール ザ セラム aa
23位 大人のやる気ペン
24位 ピュオーラ 炭酸ハミガキ
25位 Moflin
26位 dカード PLATINUM
27位 弾けるしゅわしゅわアイスバー
28位 映画『8番出口』
29位 ジャングリア沖縄
30位 令和の米騒動  

  • さて「2026ヒット予測100」は、現在販売中の日経トレンディの目玉企画なので断片的にしか報じられていない。本誌を購入するのが一番早いので購入を勧めたいが、有り難いことにTBS NEWS DIG Powered by JNN( https://www.youtube.com/watch?v=0YFow5kHBE4 )ではベスト20をリスト化してくれているのが下図だ。「予測」なので新しく、パッと見はよくわからないものも多いのだが、雑誌をこまめに読むといくつかの特色がある。一つはやはり「AI」である。しかも、「どのようにAIを使うのか」がランキングに多く入っている気がする。例えば1位の「多言語リアルタイム飜訳」であり、4位「生成AIショッピング」などだ。特に「生成AIショッピング」は、ネットの「お薦めのXXトップ10」といった記事にかなり恣意性が入っており、あまり満足度が高い買い物が出来ない経験を誰もがする中で、ある意味での「自分だけの買い物コンシェルジェ」にAIがなってくれるという点では消費行動を変える可能性がある。また、金融業界出身の筆者にとって9位「ステーブルコイン」には脅威を感じる。これは円やドルなどの法定通貨の裏付けがある「仮想通貨」なのだが、驚くのはその利用料金の安さで、これまで相当な手数料を支払わなければならなかった決済や送金などが殆ど無料で行える。これらの手数料がどんどんあがり、それが収益源となっていた金融機関にとっては、かなりマグニチュードが大きい可能性がある。
  • そんな中で筆者が目をとめて、隅から隅までじっくり目を通して読んだのが8位「のびっこピクニック」だ。要するに屋内型の子供向けの超大型プレイグラウンドで、「なんだ、キッザニアじゃねえか」と思う方もいるだろうが「違う」。夏の酷暑での外遊びは熱中症のリスクが高く、子供の安全に今まで以上に注意を払う必要が出てくる中、屋内プレイグラウンドは親にも子にも貴重な設備となる。実際、イオンファンタジーは東南アジアなどを中心に凄く巨大な屋内プレイグラウンドが大盛況だし、日本国内でも元マイカル系の「ニミウス」やグリー系の「リトプラ」は着々とこうした私設を増やしている。
  • そして、さらに最も重要なのが、超大型プレイグラウンドであるということから、寂れてしまった商業施設、ショッピングモールなどの再生にこれが応用できるということだ。実際、一時期のショッピングモールブームはピークアウトし、日本ショッピングセンター協会の統計によると2018年をピークに減少が続いている。また、閉鎖数も開業数を下回っている。「デッドモール(廃墟モール)」でwiki検索すると日本では「ピエリ守山(滋賀県)」「LCワールド本巣(岐阜県)」「イオンモール名古屋みなと(愛知県)」「グランモール(福岡県)」などの例示がされているが、テナントが十分に入居していないモールはこれ以外でも多く、我々消費者があちこち目にするところだ。これらの再生や活用は極めて難しいのだが、しかし、酷暑と子供の安全性は日本全国共通の課題であり、空調設備が整った広い室内空間があるこれら私設は大型屋内プレイグラウンドにすることで復活する可能性がある。
  • 最後に「2025年新語流行語大賞候補」を見よう。新語流行語大賞は年度の後半に流行った言葉が選ばれる傾向があり、必ずしも消費や社会の情勢を示しているとは言えないケースもあるが、共通点は注目する必要がある。筆者が一目見て感じたのは、社会的な要素が多いことだ。例えば「企業風土」「古古古米」「戦後80年/昭和100年」「トランプ関税」「働いて、働いて、働いて、働いて参ります」「物価高」「フリーランス保護法」など。インフレ物価高、実質賃金伸び悩み、生活苦といった家計に直結する言葉が多い。果たして「給付金付き減税」や「消費税減税」などの家計支援策が出されるかの見通しは不透明だが、高市内閣への支持率が70%台と異常な高水準になっていることはまさしくその裏返しであるように思う。
  • もちろん、昨年発表されたものの多くが記憶の彼方に飛んでいるように、この11月に発表されたことが来年の11月にも記憶に留まっているかはわからない。ただ、現時点の時系列断面を観察するには重要だし、ランキングの低い意外なものがキートレンドになっている可能性もある。くどいが、雑誌を購入してじっくりと読んでみることをお薦めする。

                             (了)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です