- 恐縮ながら、今回も「ぎゅっ」と濃縮した、コンパクトバージョンで。
- このコラムでは生成AIの急速な拡大や、「チームみらい」のリーダーである参院議員の安野貴博さんへの注目などに触れてきた。ほんの半年ほど前のことだ。それが怖ろしいスピードで社会に浸透しており、もはや生成AIは非常に身近な「ツール」になったと感じる。そして、それに伴う問題点も垣間見えてきた。
- 「寄り添い力」: 生成AIに「心や気持ち」の相談相手になってもらうという使い方は2025年の秋頃から急速に普及した。筆者も今回の白内障手術に関連する心の揺れを生成AIに吐露し、医学的な見地、心理的な見地から貰ったアドバイスで心の落ち着きを得た一人である。何か不安が頭をかすめても「いざとなれば生成AIがある」という安心感は絶大で、「寄り添い力」は圧倒的だった。これが、心身が疲れている人にとっては、一回数万円カウンセリングよりも遙かにとっつきやすいのは当然だろう。なにせ個人情報はすべてビックデータの中に紛れ込むので、人物が特定されることもない。
- 「利用者と生成AIによる相互精度向上」: ほんの数ヶ月前まで盛んだった生成AI無料セミナーやプロンプト指南本が、冬に入る頃には急速に減った。実際に使うとわかるが、こちら側がどんな文章を書いても生成AIは的確に判断するという「言語処理能力」が格段に上昇したためだ。もし期待通りの返答でなければ、追加情報を入力すれば精度の高い返答が返ってくる。つまり「利用者vs生成AI」という対立軸ではなく、「利用者×生成AI」という相互軸で生成AIは使えるようになった。
- 例示しよう。有志とあるブレストを定期的にしているが、ペンを持ってくるのを忘れたため生成AIの画面に議論をごく簡単に入力してみた。当初は「まとめ要約」を生成AIにやらせることができれば、程度の軽い気持ちだったが、生成AIからの返答にはメンバーが知らない知識や事例、発想が含まれていることに気づいた。さらにそれをメンバーに共有してブレストを進めると、どんどん深掘りされていくことが実感としてわかる。なおかつ「この議論はどの程度のレベルか?」と尋ねると、「この会議内容のユニーク度は上位15%です」などと教えてくれる。生成AIを交えて会議をすることは格段に分解能をあげることになる。
- 「生成AI『臭さ』」: 逆にネガティブ面だ。SNSなどで生成AIによる写真や動画を投稿する人が増えた。しかし、個人的な意見だが、これが結構シラケるというか、イラつくことが多い。それは「フェイク動画はけしからん」という大上段に振りかぶった議論ではなく、「なんとなくイヤ」なのだ。
- これも例示しよう。筆者の学生時代の友人のSNSへの投稿だ。彼は非常に頭の切れる人物であった一方、未成年なのに夜ごと街中のディスコに繰り出して飲んで踊るという「やんちゃな」ヤツでもあった。今、彼は医師になり、途轍もない難しい手術やハードな仕事をこなしている。と同時に、休みの時などは相変わらず着て・飲んで・食って・踊る生活らしい。そのギャップを好ましく思い、しばしばいいねボタンを押し続けてきた。
- しかし、変化はやはり昨年初冬の頃からだ。今までは専ら勤務先や学会での弁当の写真、オフの時に遊びにいった店の写真などを投稿していたのが、突如、自宅の前で雪かきをしている写真、著名人と肩を組んでいる写真、スノボをやっている写真など「ん?」と思う写真を投稿し始めた。医師は社会的地位が高いため、自宅を公開することをあまり好まない。また、彼は著名人と繋がりをあることを「ひけらかし」をする人物ではない。さらには怪我をすれば手術できなくなるスノボやスキーをすることは責任感の強い彼はあまりないと本人から聞いていたので、違和感があった。そう、勘の良い人はわかるが、それらはすべて生成AIが作った写真だったのだ。
- 地頭の良い彼としては生成AIで、やりたいけどできないことを創作するのは楽しかったのだろう。それはわかる。しかし、正直なところ、写真の出所をしって筆者は鼻白んだ。ハードワークや難しい手術をなんなくこなし、地域医療の最先端で戦う彼だから、学生時代からのやんちゃを微笑ましく感じていたのだが、その中のいくつかは机上創作と知ってしまったからだ。これを一言でまとめれば、「生成AIとの付き合いは、TPOを考えて」ということになるだろう。
- 生成AIが道具として遙かに使いやすく、そして効果的な武器であるということは事実でもある。しかし、生成AI利用は、適したTPOでは想像を超えた強力な武器になる一方で、TPOを間違えると逆効果になる。これは我が身を振り返って心得ておくべきことだと最近感じている。
(了)
