- 若手との議論は、なかなかに「辛辣」な意見が出てきて興味深い。今日の余談は「渋谷にあんなに再開発ビルがいるんですかねえ」であった。関東以外に住んでいる方に取っては、ピンと来ないところもあるだろうが、とにかく東京渋谷の再開発が「異常」とも言えるほどのスピードなのだ。下記の地図で、黄色が既に建築運用済み、緑が建築中。計画中だ。

- これだけでピンとこなければこの写真がよかろう。近代的と言えば近代的なビルが次々に建ち、それ自体はなんら難癖を付けるべきものではないのだが、これだけの大型ビルの床がすべて「埋まる」のかということを考えるとちょっと慄然とする。




- まぁ、人の財布を気にする必要はないのだが、問題はそこを使う人々の利便性や生活の質が本当に上がるのかだ。この再開発の初期は、東急東横線の駅舎が地上の比較的ノンビリしたもの(関西の人は阪急大阪梅田駅を想像して欲しい)から、地下五階(深いぞ)のしかもホームがやたらに狭くてホームドアがなければラッシュ時には線路に人が落下しそうなものに変わったところから始まった記憶がある。筆者はこの狭いホームが嫌で渋谷で電車を降りることが減った。そのまま新宿三丁目まで乗っていって、比較的まだノンビリしている新宿の百貨店や地下商店街をブラブラすることが多い。



- そんなこんな話をする中、若手メンバーから出されたのが「Sakura Stageって行きました?。すごく綺麗なんですけど、人もテナントも殆どいないんですよねえ」という疑問だ。Shibuya Sakura StageはちょっとJR駅から離れた渋谷の高級住宅街の一角を再開発したところだ。なるほどおしゃれな建物で、広場もあり、高級店だけではなく手頃なテナントも多く入っている。ところがその若手曰く「なぜだか行かないんですよねえ、あっち側」という疑問が呈された。これについては喧々諤々の議論が為されたのだが、その大きな理由は、国道246号線でJR渋谷駅側と大きく分断されているからであろうという結論となった。JR渋谷駅側とペデストリアンデッキで繋がれているのだが、心理的に道路や川などで分断された方には客足は向かぬものらしい。そういえば、経済産業省が定めた商圏分析手法で「ハフモデル」というものがあるが、そこでも「遠くの店舗に行くことに抵抗がある」「大きな障害物(大型道路や川、海)などがあると商圏はそこで途切れる」という消費者心理が使われる。こんな都心でもそれは通用しているのかもしれない。





- 加えて面白い意見が出た。「なんだか、今の渋谷ってキレイ過ぎませんか?」。20代、30代の若者からこの言葉が出たことにはちょっと驚いた。そう、「面白い街」というのは、適度にキレイで、適度に雑然としていて、ワチャワチャしている街なのだ、と。確かに再開発以前の渋谷は、大きなビルは東急文化会館や西武百貨店などくらいで、スクランブル交差点にTSUTAYAの大きい店が建つまでは中低層の街だった。「渋谷センター街」という如何にも怪しげな通りには、「チーマー」と呼ばれるやんちゃな若者や「ギャル」が厚底ブーツを履いてたむろしていたし、道玄坂から少し南にいったところには「思い出通り」という昼飲みができる焼き鳥屋が軒を並べていたし、宮増坂下からちょっと奥に入ると「のんべい横丁」という、いかにもサラリーマンのオアシスのような小料理屋が並んでいた(現在もある)。こうした「雑然」としたところが街のパワーであり、色々な人が集まる理由だったのに、再開発中の渋谷は妙にオシャレで、それでいてハリボテ感満載の街になってしまったことが、魅力を感じさせない理由なのではないか、という若手諸君の意見は「なるほど」と唸らせるところがあった。



- 確かに駅前再開発に沸く「自由が丘」は1970年代の「アンノン族」にオシャレな街と言われて久しいが、この街の真骨頂は線路をはさんで西側にあるオシャレな街に対して、東側の「美観街」と呼ばれる「昭和」の飲み屋街だ。千円でべろべろに酔える「せんべろ」の聖地は北区赤羽だそうだが、この「美観街」もべろべろに酔える。線路のガードを一つくぐっただけでまるっきり違う表情を見せるからこそ、街は面白い。それを若手のリーダーはこうまとめてくれた。
- 「街の活性化は安い家賃が必要でそのために必須なのはボロいか下世話か。その両方が必要なんでしょう。美しい街の開発と真逆の発想ですが、でも結局そういう面を無視するとつまらなくなる。再開発続けていくとしたら、どうなんでしょう。今日の仮結論は健全さを捨てる、でしょうか。ヴィレッジヴァンガードが面白かったのは、近代的ショッピングモールの中に薄汚れた本屋を再現して、そこに怪しげなものを置いていることでした。再開発で汚れが消されすぎて、うっすらとあった犯罪の匂いとか、あやしげな匂いが消臭されてキレイになることで逆にドン詰まる。そこが辛いですね。再開発の限界はそこなのでしょう。なぜ人気があり続けている吉祥寺は綺麗な再開発ではなく、商店街のど真ん中にあるコロッケ屋が生き続けているか。そんなところに商業地の答えがあるように思えます」、なるほど尤もだ。





(了)