• ヤマダホールディングスとデオデオが経営統合を発表した。M&Aが近年頻繁な小売業界ではなんの珍しきことではないニュースかもしれないが、「家電量販店」がバチバチの闘いをしていた2000年代に調査担当をしていた自分としては感慨深い。下記は家電量販店の一覧だが、これら各社がほぼ単独で火花を散らしていたのが、「弱肉強食」の中で急速に統合再編が行われ、今の業界構図となった。いわゆるカメラ販売を祖業とするカメラ系二社(ヨドバシカメラ、ビックカメラ)を除く中で、一時代を作ったのは「YKK(ヤマダ、ケーズ、コジマ)」の北関東三社だった。
  • ケーズ電機(現・ケーズホールディングス): 1947年創業と最も古い歴史を誇るのが水戸に本社を置く同社だ。当初はカトーデンキとして松下の系列特約店である「ナショナルショップ」に加盟していた。ケーズの経営方針としてユニークなのは「現金値引き」「がんばらない経営」だ。YKK三社とも株式上場をしていたが、正直なところケーズの株価は「割安株」として常に他社よりも低い評価を得ていた印象が強い。そしてそれは、ひたすら拡大に向かう他社に比べて、「無理をせずやれることをやり、顧客に譲与利益分を還元する」という創業者の長男加藤修一氏がその哲学を貫いたからであろう。決算説明会で過激なアナリストは「どうしてもっと拡大をしないのか!」と経営陣を責めるのだが、それに対して常に穏やかに答えていた印象が筆者には強い。そしてそれは、多少こじつけかもしれないが、彼らのイメージキャラクターが「ちびまる子ちゃん」であることが象徴しているような気がする。北関東YKKの中で最も穏健なのがケーズだ。
  • コジマ: 1955年に創業したのがコジマだ。創業者の小島勝平氏は「安値日本一への挑戦」を前面に打ち出し、低価格路線を放棄したヤマダ電機に対して相対的に有利な地位を築き、1997年にはベスト電器を抜いて家電量販店販売額一位となり、「価格破壊」「積極経営」の代名詞となる。幹線道路沿いに1,000~2,000㎡の店を多店舗展開して集客に強みがあった。ただ、競合各社が10,000~20,000㎡くらいの巨艦店を出店するようになると、品揃えや在庫の面などで不利となり、徐々に業績を落とすようになる。また不運なことに創業者は取引先とのゴルフ中にボールが頭部にあたり、健康を害した。中型店をスクラップし、巨艦店の出店を行うべきだったが、種々の理由からそれも上手く行かず、長男の小島章利氏がMacOSを搭載したPC(AppleのPCではない)を販売したり、本社にドラッグストアを併設するなどの新機軸を打ち出したが、他社からの侵攻は止まらず経営の落ち込みは著しくなった。そこで小島勝平氏の実兄の娘婿である寺崎悦男氏(銀行出身)がビックカメラとの提携を薦め、今の「ビック・コジマ」となった。ちなみに創業者の小島勝平はその名前から成田山新勝寺が自分を守ってくれる寺社として常にお参りをしているのだ、とIPO時に筆者に笑顔で語っていたのを忘れられない。
  • ヤマダ電機: 1973年に日本ビクター出身の山田昇が「ナショナルショップ」創業。YKKでは最後発であり、低価格路線では当時YKKトップのコジマに苦しめられたが、大型店舗出店の規制緩和に会わせて、店舗大型化で圧倒的な力を持つようになる。また、北関東に拘らず、全国展開に舵を切り2005年には年商一兆円を達成。最初の創業地での前橋での家族の不幸な事故を乗り越え、髙﨑で再出発してからは「業界の鬼」として徹底的な同業他社への闘いを挑んだ。また、消費者の家電カテゴリーへの興味にも敏感で、従来の白物家電に加えて、パソコンや携帯オーディオ・電話、モバイル機器などの品揃えも積極化し、「LAB」「テックランド」「テックサイト」など他業態化も進めた。さらには2011年に住宅メーカーエスバイエルを傘下に収め、家電・電気製品だけでなく、住宅建設やリフォームなど衣食住の「住」部門への多角展開に取り組んだ。ちなみにこの頃、最も住宅リフォームに力を入れていたのがエディオンであり、今回の統合の背景にはそれもある。2022年の大塚家具との合併による家具インテリアへの展開もまた「住」分野の強化の一環である。
  • ヤマダとエディオンの統合: YKK三社の社史を語ってきただけのような今回のコラムながら、その背景として述べたいのは「家電量販店」の今後の構図を読み取っていきたいという思いがある。太平洋戦争後、日本の消費産業は「衣食住」の順番で隆盛を極めて。衣料であればニチイや長崎屋、食費であればダイエーや西友や近年の数ある食品スーパー、しかし「住」に関してはこれらに劣後したことは否定出来ない。家電量販店、ホームセンター、家具インテリア専門店はバラバラに存在していたが、それらが一つの流れになることはなかった。この流れが変わったのは、ニトリの成功と島忠との統合、ヤマダ電機と大塚家具との統合、そしてエディオンが自社でコツコツと進めていたリフォーム事業への注力だ。その一部が今回、エディオン・ヤマダの統合という形で進展したことが最も着目する点だと考える。「住」部門で顧客のニーズを掴むには「住宅に脚を踏み入れる」機会を掴むことが最も重要だ(東京ガスがガス点検や送電サービスで顧客宅にあげてもらうようにしているのはその分かりやすい例だ)。家電量販店も商品搬入と設置でそれは可能だが、実際は系列特約店のような小さい家電店が小さいビジネスでも頻繁に高齢者などの自宅を訪れ、「住」の相談相手となることを顧客は求めている。ヤマダは「コスモスベリーズ」でその原点に立ち返ろうとしたが、必ずしも大成功しているとは言いがたい。そこでのリフォームで定評のあるエディオンとの統合。メディアで色々と書かれている「シェア拡大とPB開発」が動機であるという論点とは違う動機がそこにはあるように思えてならない。もちろんこれは筆者の想像であるが、
  • 人口減少・消費低迷予測の中で、規模拡大の事業統合やM&Aは確かに重要だろう。しかし、一方で「隠れたニーズ」の取り込みもまた重要だし、その余地はある。いまだ遅れている「住生活」分野での、特に高齢者向けサービスという点では展開の余地が残っているのではないか。そんなことを思い、一世を風靡YKKの経営の違いと今回の統合にそって述べてみた。

(了)

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