《 プラットフォーム 》
 2月締め決算発表から3月締め決算発表に移ったところで、ゴールデンウイークとなりました。2月決算発表に関する振り返りは先週の余談で書いたのですが、もう一点、書き残したいことがあります。それは「プラットフォーム」についてです。

 今回の大震災によって自社のビジネスモデルを振り返り、そしてどういう軸で自社を位置づけて良いかに迷っているように見えるというのが先週の骨子でした。しかし、それは単に迷っているだけではないということも申し添えたいと思います。

 今回、数回ではありますが、久々に聞いた言葉が「プラットフォーム」でした。私は新しいプラットフォームを作りたいのだ、と主張する経営者が数名いらっしゃいました。これは何かの予兆なのではないかと感じます。

《 CCCのプラットフォーム 》
 私の個人的な体験で言えば、「プラットフォーム」という言葉を強く意識したのは、今年MBOを発表されたカルチャーコンビニエンスクラブ(CCC)の増田氏への取材(2000年頃)でした。当時はまだCCCはレンタルビデオ企業という認識が強く、その割にセルビデオや書店も並営し、直営店とブランド名が異なるフランチャイズ店が混在するという、全体を掴みにくい既成概念を超える企業でした。

 また衛星放送にも乗りだし、サービス産業の枠を乗り越えてしまったことも、一体どういう手法で分析すれば良いのか見当がつかず、アナリスト泣かせ、投資家泣かせの企業でした。

 そんな背景があったところに取材に伺う機会に恵まれたのですが、その際に増田氏が何度も強調しておられたのが「CCCはメディアに関する『プラットフォーム』を提供する企業である」ということです。

 つまり活字・音楽・映像といったメディアを消費者に届けるための「仕組み」を作るのがCCCであり、レンタルビデオなのかセルビデオなのか、中古本なのか新本なのか、もしくはリアル店舗なのかバーチャル店舗や衛星放送もすべて「プラットフォーム」に内包されるということだったのではないかと思います。

《 金属疲労とプラットフォーム 》
 今回の決算発表の中で数社の経営者が「プラットフォーム」に言及したことは、これまでの流通サービス事業のあり方がそろそろ金属疲労を起こし始めた一方で、一見別々に見える事業の根底に流れる一気通貫する何かがあることに気づいて人々が出てきているのではないでしょうか。その予感を「プラットフォーム」という言葉で示しているように思います。

 残念ながら、CCCはメディアというものの根底に流れる何か(=プラットフォーム)の存在を感じながらも、早い段階での株式公開をしたため、事業として確立するためには回り道をせざるを得なかったように思われます。だからこそ今回のMBOなのかもしれません。次にCCCがpublicの企業としてまた登場する時には、メディアのプラットフォームがあっと驚くような形で事業としても、また世の流れとしても明瞭に見える形にしたものをひっさげて現れることを期待しています。

 流通サービスが新しいプラットフォームを整えるというのはどういうことなのか、その時にお題目のように唱えられているサプライチェーンというものがどう変わっているのか、是非、見てみたい気がします。

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