▼ 我が家は大河ドラマに「ハマる」時と「ハマらない」時が明確に分かれる。なんというのだろう、嗅覚が働くというのか、第1回を見てもう2回目以降を見ずに一年終わる年と、第1回を見て第2回からは夕食の後片付けもそそくさと正座してテレビの前に日曜20時には座っている年がハッキリ別れる。今年はもちろん正座の年だ。「鎌倉殿の13人」、三谷幸喜脚本の面白さはやはり裏切らなかった。

▼ 彼は「新撰組!」が最初の大河ドラマで次に「真田丸」、そして今回なのだが、共通しているのが「組織と人」を描ききっていることだ。歴史学者が三谷式大河ドラマを見て「史実と違う」と文句をつけることほど間抜けなことはない。彼が常に書いているのは、人が組織に属することで生まれる変質や残忍さや優しさなどであるからだ。

▼ 「新撰組!」をやっていた頃、ちょうど自分は非常にしんどい時期を過ごしていた。経済処遇的にはとても有り難い立場にいたのだけど、その代償としてのプレッシャー、業務量、そして人との関係への気配りの必要性はハンパなかった。なんど自室で「新撰組!」を見て泣いただろうか。

▼ そして今回の「鎌倉殿の13人」もまた、教科書の絵でしか記憶のない源頼朝が持つ「政治家」としての残酷さと、その命令に従わねばならない「北条義時」の悩む姿はまさしくすべての組織人に心を打つ。食っていくために、より高いポジションを得るために、そして一族を守るために、如何に理不尽に生きていかなければならないか。それを毎週日曜日に見せられて、しかし、目をそむけられない自分がいる。凄いドラマだ。

▼ いつも45分間があっという間に過ぎ、21時からのNHKスペシャルに流れるのだけど、昨日はあまり興味がないテーマなので地デジ、BS、CSとザッピングしていたら、寺尾聰さんと宮崎美子さんの映画「雨あがる」をやっていたので何気なく見ていたら目を離せなくなっていた。剣の技術は天才的ながら心優しい三沢伊兵衛とその妻が、大雨で川渡りの足止めを食らった日々を描いた山本周五郎さん原作らしい小品なのだが、心溶ける思いがする柔らかい映画だった。

▼ 組織と権力と人とが絡み合う「鎌倉殿の13人」を見た後の、心に残っていた澱を流してくれるようなこの優しさと柔らかさは何であろう。「知足」を知り、「これで良い」と日々を受け入れて生きることの尊さを感じる映画だった。

▼ ここのところ裁量労働という名前の365日・24時間の業務体制で常に頭の中から業務が抜けなくなっていたのだけど、それを洗い流してくれるという意味でやはり芸術は素晴らしいのだなあと思った次第。ん?、オチ?。オチは今日は(今日も)無い。

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