《 サラリーマンNEO 》
 NHKがどんどん面白くなっている。民放の視聴率低下が止まらなくなる中で、NHKの相対評価はうなぎ登りらしい。

 確かに以前に触れたNHK教育でやっていた坂本龍一さんの「スコラ」や、「タイムスクープハンター」、終わってしまったけど「ブラタモリ」、「SONGS」などは録画しても見たくなる番組。特に「ブラタモリ」は、「夫婦で見る番組」の一位であったそうだ。いずれもが知的好奇心を柔らかい手法で上手に仕上げている逸品である。

 特にこの六年間、僕がかかさずに見ているのが「サラリーマンNEO」。毎週火曜日夜にやっている30分間のバラエティなのだが(時々時間変更あり)、宮仕えを経験したことのある人間にとっては抱腹絶倒の面白さなのだ。

 名前の通り、サラリーマン生活に照準を合わせたテーマの寸劇集なのだが、会社組織がやっている様々な行動が如何に無意味でくだらなく、非生産性に満ちたものであるかを演技派のタレントさんが演じてくれる。演劇好きの方にとっては、生瀬勝久さん、沢村一樹さん、田口浩正さん、中越典子さんといった俳優女優の方が出演しているといえば、その面白さは言うまでもないはず。

《 それぞれの立場での面白さ 》
 ただ、今年のシーズン6からは鑑賞の仕方が自分でちょっと変わってきたことを感じる。というのも、一言で言えば「あまりに身に沁みて笑えなくなってきた」のだ。

 企業経営者の苦悩、中間管理職のストレス、そして一般社員の不満、それらを貫く「組織における評価の理不尽さ」がテーマだから、本質を突きすぎていて、もうお笑いバラエティを超えた存在になってしまったからなのだろうと推察している。会社で辛いことがあった人などは「サラリーマンNEO」を見てしまうことでさらに落ち込み、翌日会社に行くのが嫌になってしまうのではないか、という余計な心配までしてしまうほどだ。

 しかもそれを作成していて、放映しているのが、これまた官僚主義の権化のように一時期は言われていたNHKなのだから面白い。どうやって、NHKがこういった路線に転換できたのか、知りたいものだ。

《 モノを決めないための会議と責任回避 》
 「サラリーマンNEO」で面白い寸劇はたくさんあるのだが、なかんづく「会議」と「責任回避」に関連するテーマの寸劇・コントは素晴らしい。日本の大組織での会議は「モノを決めないための会議」であるとはよく揶揄されるが、まさしくそれを一流のウイットに紛れ込ませて笑いに昇華してくれる。

 そして「責任回避」。先日は、「部長自らが忘れていた顧客プレゼンの責任がいつのまにか、直属の部下と部員全員の責任に、たった五分間で転嫁されていく様子」を描いている。「責任転嫁男」の立ち回りのうまさと「なるほど、こういう人はいそうだ!」と納得している自分に爆笑する。しかし、見終わって賑やかなエンドクレジットが終わった後のあまりのほろ苦さにはしばらく沈黙するほどだ。

 というわけで、これは企業組織に属している人にはみんな見て欲しい番組だ。わずか30分なので録画しておけば、さらさらっと見ることができるだろう。どの立場の人間にもそれぞれのインプリケーションが得られる貴重な番組である。

 ただ、嫌なことがあった日に夜中のリアルタイム放送で見ると心の傷口を広げる可能性があるのでご注意!。休日ののんびりした時に見ることをお奨めする(苦笑)。ちなみにシーズン5以前はDVDとして発売されたり、レンタルされているので、ハマった方はこちらをご覧になるのも一興かと。

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