• 前号が無断休刊となり、まことに申し訳ない。出張先で強烈な風邪を引いて、晴れ渡る空をホテルの窓から見上げながら、熱と咳で唸っていた。果たして飛行機に乗って帰京できるのかと、汗でベトベトのベッドにくるまって呆然としていたのだが、こうして一週間後デスクに向かっている自分がいる。気力というのは凄いものだ。
  • 実は今年は厄年なんじゃないかと思うような日々が続いている。1月には白内障手術をした。目の手術をするのは42年ぶりだ。簡単な手術だと知ってはいたが、視力が安定するのに3~6ヶ月かかるとは知らなかった。遠くがよく見えるようになった分、手元が怪しくなり老眼鏡を作ったのだが、運転用・仕事用・読書ようの三本、合っているのか合っていないのか、いまだにわからないまま梅雨突入。そうしたら、長患いしていた義母の状態がよろしくないとの報せ。妻はほぼ毎日関西の実家にお世話と手伝いにいく中、当方は万が一に備えて在宅業務で待機状態。随分とアポイントや約束をキャンセル、リスケジュールさせていただくこととなり申し訳ない。痛みもなく安らかに逝った義母を送り、明日は帰京という夜、今度は突然両足首に真っ赤な発疹。夜中も0時過ぎで朝一の新幹線なのでドラッグストアも開いていない。とにかく帰京してかかりつけの皮膚科に飛び込んだ時には発疹は全身あちこちに出来ていた。原因を訊くと、たまっていたストレスが一気に噴出したのだろう、と。そして出張先での風邪だ。テレビでは「楽しい夏休み!」と宣伝しているのを恨めしく見て「楽しくなんかないやい!」と八つ当たりしていたらもう旧盆近い。これを厄年と言わずしてなんと言おうか。
  • さて、発疹で困ったのが「履き物」である。接触性の発疹のリスクもあるので、靴下+靴は御法度。かといって、通院やオフィスに伺うにも裸足というわけにはいかぬ。となると、サンダルである。人にお会いする時には「実はこういう理由で」とお詫びすれば許していただけるが、ワイシャツにスーツのズボンでサンダル履きというのはなんともみっともない。せめてかかとまでストラップのついたスポーツサンダルはないかとAmazonで探した。しかし、こういう時のAmazon検索の役のたたなさはマウスを机にたたきつけたくなるほどだ。「メンズ スポーツサンダル かかとストラップ マジックテープ 28cm」と入れているにもかかわらず、女性向けの洒落たサンダルやつっかけサンダルやヒモ式のサンダルなど、意地悪をしているのかと思うようなものを推奨してくる。そうだ「Rufus」だ!。AIで買い物を手伝ってくれる仕組みにういて先日、このコラムで書いたばかりじゃないか。期待して同じキーワードで「Rufus」で推奨してもらう。今度はキーボードを叩きつけたくなった。革製のビジネスシューズとビーチサンダルにマジックテープで調整できないサンダルの写真が並び「これが最適です」と言ってきた。まっこと、AIは使えない時は使えないシロモノであることよのぉ。結局、それらしきものを自力で探し、それでも写真だけでは詳細はよくわからないので、似たようなスポーツサンダルを三足も買う羽目となった。我が家の靴箱は筆者のサンダルだらけで、「邪魔ね!」という家族の目が怖い。
  • 出張先でも似た経験をした。風邪の症状にどうにも我慢できず、Googleマップで近くの内科を探して診察して貰い、薬を処方して貰った。日本の国民皆保険は素晴らしい。病院はそこそこの規模だったので、調剤薬局も周りにたくさんある。その一軒に飛び込んで処方箋を出す。「あ~、これ在庫切れでして。1-2日後に郵送できますが…」。それじゃもう帰京している。仕方なくとなりの薬局で処方箋出す。こちらも在庫がない薬があるという。「ちょっと次の薬局にいくのも炎天下でしんどいので、医師に連絡してほかのお薬じゃ駄目かきいてもらえませんか?」と頼むと「そういうサービスはやっていない」とケンもホロロ。ただ、これは正確に言えば調剤薬局の果たす義務としては違反だ。在庫を持たない場合、医師に連絡をとってほかの医薬品で良いかどうかを訊いたり、近隣の調剤薬局や問屋に薬がないかを尋ねたりするよう要請するのは調剤薬局の義務だ。薬剤師法(昭和35 年法律第146 号)第21 条でも、「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。」として規定されている。かといって、熱のある中、言い争いをする元気もなかったので、手持ちの総合感冒薬を飲んで我慢することにしてホテルに帰ったのだが、先日のスポーツサンダルといい、モノ余り時代のくせに、必要なものをコンサルテーション受けて買うことができない「買い物難民」の時代になっていることを痛感する。
  • 極めつけは有名なカジュアル衣料ショップでTシャツを買おうとした際だ。風邪で汗だくになって、手持ちのきれいな下着は残っていない。仕方なくホテルから一番近い、有名なカジュアルショップで無地のXXL=3LのTシャツを買おうとしたら、店にはXL=2Lまでしか置いていないという。XXL=3Lは先に代金を払って翌日店に取りに来るか、もしくはECで買って下さいと笑顔の若き女性店員は言う。くどいが無地のTシャツだ。白でも黒でもグレーでも構わない。シンプルなベーシックアイテムだ。それがこの有名チェーンにはないという。泣きそうになって帰り道、ダメ元で倒れそうになりながら、ふと見つけたのが最近衣料品も扱っていることで話題のコンビニだ。カジュアル専門店でないのだから、あるわけなかろうと期待度ゼロで入店して探したら、しっかりXXLの白Tシャツがあった!。その時の感激は言葉では表せない。砂漠のオアシスを見つけたようなものだ。
  • 結局、総合感冒薬(OTC)を服用し、うがいを何度もし、体を温かいお湯できれいに拭き、その乾いた清潔なTシャツを着て、這いつくばるように、なんとか帰京した。ただ、今も納得いかないのが、これほど豊富にモノがあるのに、なぜ欲しいものが手に入らないのかということだ。「モノ余り時代の買い物難民」、それを実感した出張となったことは良かったのか悪かったのか。風邪が治りつつある今もその答えは出せないでいる。

(了)

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